日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
馬赤血球中の遊離アミノ酸濃度の変異について
渡辺 誠喜半澤 恵神田 幸子横浜 道成茂木 一重
著者情報
ジャーナル フリー

1984 年 55 巻 5 号 p. 307-314

詳細
抄録

馬赤血球の遊離アミノ酸をろ紙電気泳動法により調査し,その泳動像のうち,特に塩基性アミノ酸バンドの濃度に変異が存在することを見出した.そこでこの変異に基づき828頭の赤血球を2つの型に大別し,ついでそのアミノ酸組成を分析するとともに,赤血球のナトリウム(Na)およびカリウム(K)濃度,還元型グルタチオン(GSH)濃度並びにGPTおよびGOT活性値との関係を調査した.アミノ酸の分析はろ紙電気泳動法によるニンヒドリン反応並びにアミノ酸自動分析装置により,NaおよびK濃度は炎光分析法により,還元型グルタチオン(GSH)濃度はE. BEUTLERらのDTNB法1)により,GPTおよびGOT活性値はREITMAN-FRANKEL変法2)を赤血球用に改良した方法3)によりそれぞれ測定した.その結果,次のような成績を得た.1) 赤血球の遊離アミノ酸は,ろ紙電気泳動法による泳動像において,すべての個体で陰極側に2本,陽極側に1本,計3本のバンドに分離されるが,そのうち塩基性アミノ酸からなる陰極側の1本のバンドの相対濃度の差により,Basic amino acid陽性型(BA+型)とBasic amino acid陰性型(BA-型)の2つの型に大別された.2) 両型の遊離アミノ酸組成を調査したところ,いくつかの含有アミノ酸に著しい濃度差が認められた.総アミノ酸濃度は,BA+型14.8±1.2mM, BA-型6.8±0.50mMであり,BA+型はBA-型に比し約2.2倍高濃度であった.3) 遊離アミノ酸型とNaおよびK濃度との関係を調査したところ,Na濃度,K濃度およびNaとK濃度の和のいずれにおいても,BA+型はBA-型より低い値を示した.4) 還元型グルタチオン(GSH)濃度は,遊離アミノ酸型の間で有意な差が認められなかった.5) GPTおよびGOT活性値は,両型の間で有意な差は認められなかったが,両酵素の活性値とも,BA+型がBA-型に比し,やや低い傾向にあった.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top