1984 年 55 巻 5 号 p. 315-321
本研究は,近親交配が日本ウズラの受精率,孵化率,育成率に及ぼす影響について検討する目的で,きょうだい交配によって近交世代を進めた場合の受精率,孵化率,育成率,適応度指数(受精率×孵化率×育成率)の推移を無作為交配群と比較して検討した.
近交群では1世代目16系統36家系で出発したが,4世代目では3系統14家系となり,系統数,家系数は急激に低下した,これに対して,無作為交配群では毎世代40家系が維持された.近交群における受精率,孵化率,育成率および適応度指数はいずれも近交に伴い急激に低下した.これに対して,無作為交配群では各世代とも高い値が維持された.
形質の退化現象について回帰の面から検討した結果,受精率,孵化率,育成率,適応度指数は近交係数10%増加あたり,それぞれ2.16,5.98,5.52,7.50%低下した.育成率と適応度指数では有意な回帰係数が得られた.
以上の結果から,近交に伴う受精率,孵化率,育成率および適応度指数の低下は,ヘテロ接合体の減少に伴うホモ接合体の増加に起因するものと考察される.