日本畜産学会報
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冷却前枝肉脂肪除去が牛肉の理化学的性質に及ぼす影響
小沢 忍小石川 常吉吉武 充千国 幸一
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1985 年 56 巻 6 号 p. 456-461

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抄録

枝肉脂肪の冷却前除去処理が枝肉の冷却速度に及ぼす影響を観察するとともに,貯蔵初期における枝肉温度が肉質に及ぼす影響を検討した.黒毛和種成雌牛4頭を供試し,屠殺1時間後右半丸について腎脂肪および胸最長筋をおおっている皮下脂肪の一部を除去し,処理を施さない左半丸とともに0°Cで48時間急冷した後4°Cで貯蔵した.両区における貯蔵初期の枝肉温度低下速度を観察するため,胸最長筋3部位について24時間にわたり温度変化を記録した.また,7日間の貯蔵期間をおいた後,胸最長筋6部位および大腰筋の計7部位について試料を採取して理化学的測定を行ない,処理による理化学的性質の差異を貯蔵初期枝肉温度との関連で比較検討した.その結果,枝肉脂肪を除去することにより枝肉の冷却が促進され,とくに腎脂肪は胸最長筋腰部の温度に対して著しい影響を及ぼしていることが判明した,また,腰部においては脂肪除去により枝肉の冷却が促進された結果,対照区に比較して低いTM-valueと高いpHが観察されたことから,貯蔵初期段階における高い肉温に起因する筋肉の構造蛋白質の変性が抑えられ,解糖作用も緩慢に進展したものと推察された.その結果,保水力が向上し,またcooking lossも少なく,部位によっては肉色も改善される傾向を示した.一方,脂肪除去による肉のやわらかさに対する影響はみられなかった.以上のことから,屠殺後すみやかに枝肉脂肪とくに腎脂肪を取り除くことは,枝肉の冷却を促進する結果,肉質に好影響を及ぼすことが示唆された.

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