鶏胎便のシアル酸調製用原料としての可能性を明らかにする目的から, 初生ひなの雌雄鑑別時に排出される胎便について, そのシアル酸の種類と分布をしらべた.
鶏胎便中のシアル酸は, 透析画分中にN-アセチルノイラミン酸と, N-グリコリルノイラミン酸以外の未同定のノイラミン酸との2種類として, また, 非透析画分中にN-アセチルノイラミン酸として存在する. これらの画分中のシアル酸含量は, 乾物量の約2-3%であり, 鶏胎便がシアル酸調製用給源となりうることを示唆している. 全シアル酸の約60%は遊離型として透析画分に, 残りは非透析画分に結合型として分布するが, 後者の画分ではシアル酸は, 硫酸アンモニウム飽和によって沈殿する画分に多く含まれている. この画分は6種のシアル酸含有タンパク質から構成され, 分子量39000の成分の少量含まれることを別とすれば, 分子量20000以下の成分が主体である. ヒト胎便と異なって, 硫酸アンモニウム飽和によって沈殿しない画分は量的に少なく, その主成分は硫酸アンモニウム飽和によって沈殿する成分よりも低分子量であり, また, シアル酸含量も低い.