日本畜産学会報
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カビ発酵サラミソーセージの熟成風味発現に及ぼす熟成
乾燥期間中の微生物学的変化
沼田 正寛冨家 崇弘橋本 小由利中村 豊郎
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1988 年 59 巻 1 号 p. 12-22

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抄録

前報1)で分離したPenicillium miczynskiiを表層部に,Lactobacillus plantarumTF-1株を原料肉中にそれぞれスターターカルチャーとして添加したカビ発酵サラミソーセージ(M. F. S. S.)と,糸状菌無接種(F. S. S.)および糸状菌,乳酸菌無接種(S. S.)の3種類の発酵サラミソーセージを製造した.これらについて,M. F. S. S.の芳香生成の観点から,熟成•乾燥工程中における微生物学的変化を主に比較検討した結果,次のことが明らかとなった,(1) S. S.では熟成•乾燥初期に乳酸菌の急激な増加が認あられた.以後主要菌叢は表層部でStaphylococcusに,中心部では生菌数測定用標準寒天培地を用いた好気培養では発育せず,LBS寒天培地を用いた嫌気培養で発育する乳酸菌に変化した.(2) F. S. S.およびM. F. S. S.は常にL. plantarum TF-1株が優位を占めたが,乾燥最終日(F. S. S.で40日目,M. F. S. S.で50日目)にはS. S.中心部と同現象が認められた.(3) M. F. S. S.の水分活性の低下速度は遅く,これはP. miczynskiiの発育によるものと推定された.(4) P. miczynskiiの発育は,水分活性以外は表層部の菌数および菌叢に対して影響を及ぼさなかった.(5) 官能評価の結果,M. F. S. S.特有の芳香は表層部だけに認められた.この芳香は10日目より観察され,15日目には更に顕著であったが,以後変化はなかった.(6) F. S. S.およびM. F. S. S.の中心部で同種類の乳酸発酵臭が,S. S.ではこれと異なる乳酸発酵臭が5日目にそれぞれ認められた.以後芳香の強弱は各試験区で多少異なったが,菌叢の変化にかかわらず,本質的には5日日に形成された芳香と同じであった.(7) 以上のことから,M. F. S. S特有の芳香形成には熟成•乾燥段階において,糸状菌の機能が十分に発揮されることが不可欠であり,その糸状菌としてP. miczynskiiは適切であることが明らかとなった.

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