日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
濃厚飼料多給への切換時あん羊に対する新鮮または凍結乾燥ルーメン液のルーメン内投与の影響
寺島 福秋金子 雅一伊藤 宏
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 59 巻 4 号 p. 357-365

詳細
抄録

反芻家畜において粗飼料主体給与から濃厚飼料多給へ急激に飼料を切り換えた場合,乳酸アシドーシス等のルーメン発酵異常が起こる.本実験は濃厚飼料給与に適応した新鮮ルーメン液またはその凍結乾燥標品を飼料切換時めん羊のルーメン内に投与し,飼料摂取量およびルーメン発酵に対する影響を検討した.粗飼料給与に適応しためん羊を2日間絶食した後,濃厚飼料を1日2時間だけ7日間給与した.実験期間1日目および2日目の飼料給与直前に脱イオン水(対照区),濃厚飼料給与に適応した新鮮ルーメン液またはその凍結乾燥標品を含む溶液(600ml)をルーメン内に投与した.1日目の飼料摂取量は区間に差異は認められなかったが,2日目から4日目の飼料摂取量は新鮮ルーメン液投与めん羊で対照区より多く,凍結乾燥標品投与区で著しく少なかった.1日目の濃厚飼料給与後におけるルーメン液中乳酸濃度は,新鮮ルーメン液投与区でほとんど増加しなかったが対照区および凍結乾燥標品投与区で著しく増加した.この増加割合は標品投与区で大きかった,いずれの区でも2日目以降のルーメン液中乳酸濃度は低かった.1日目のルーメン内VFA濃度は濃厚飼料給与後増加したが,その増加割合は新鮮ルーメン液投与区で大きく,標品投与区で著しく小さかった.2日目以降のVFA濃度も同様の傾向を示した.これらのことから,濃厚飼料に適応したルーメン液の投与は急速な濃厚飼料への切換時の適応に対して効果を示すが,凍結乾燥標品の投与はむしろ乳酸産生を増加させてルーメン発酵異常をもたらすものと考えられる.

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top