1988 年 59 巻 4 号 p. 351-356
複胃をもち,反芻動物のモデル動物として有望視されているハタネズミの消化管内における原虫相を検索した.その結果,反芻胃内や馬大腸内,またカピバラの下部消化管内から報告されているような繊毛虫の存在は認められなかったが,前胃を含む調査した全ての部位から多数の鞭毛虫が験出された.盲腸,直腸内からは2種の鞭毛虫が認められ,それぞれTritrichomonas muris, Tetratrichomonas microtiと同定された.一方,前胃および後胃からは1種のみが見出された.本種はトリコモナス類であると考えられたものの,同定の有力な特徴である前鞭毛を有していなかったが,虫体の計測値および形態の比較から,本来下部消化管である盲腸,直腸に生息しているT. murisの栄養体への移行型であると考えられた.