日本畜産学会報
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BLUP法に用いるデータ量が閉鎖群における育種価推定の正確度に与える影響
佐藤 正寛西田 朗
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1990 年 61 巻 10 号 p. 902-906

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抄録

アニマルモデルのBLUP法に用いる能力記録および血統情報の世代数が,育種価推定の正確度に与える影響をコンピュータシミュレーションにより検討した.その際,わが国で行なわれている豚の系統造成の規模に即して雄10頭,雌40頭の閉鎖群を想定した.
まず3種類の形質を想定して,それらの遺伝率を0.1,0.3,0.5とした.ついで各形質に対し,5世代分のきょうだい同士を避けた無作為交配による能力記録をコンビュータで発生させ,最終世代の各個体の育種価を,用いる能力記録および血統情報の世代数を変えて推定した.
その結果,遺伝率の低い形質(h2=0.1)では高い形質(h2=0.5)に比べて,BLUP法に用いる能力記録および血統情報の世代数を増すことによる育種価推定の正確度の上昇率が大きいことを明らかにした.また,遺伝率が0.1のときには,用いる能力記録および血統情報を5世代分まで増すにつれて,育種価推定の正確度は高まり続けるが,遺伝率が0.5のときには,3世代分より多くの記録を用いても,育種価推定の正確度はほとんど高まらなかった.予測されたとおり,遺伝率の高い形質ほど育種価推定の正確度は高く,その正確度の標準偏差は小さい傾向にあった.なお,発生させた血統情報における世代あたりの平均血縁係数の上昇は2.4%であった.

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