日本畜産学会報
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産卵鶏の卵巣における静脈分布の立体的観察
織部 智宏李 丹山田 學堀内 俊孝
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1993 年 64 巻 6 号 p. 614-622

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抄録

産卵鶏の卵巣における静脈の分布状態を調査するために,鋳型標本を作製して立体的に観察した.産卵鶏の卵巣は背側部では一塊の実質組織からなるが,腹側部では7~9部位の房状の卵巣に分葉している.卵巣腹側部における房状卵巣の皮質には,毛細静脈網が密に分布し,その中に多数の未成熟卵胞のこん跡が見られた.毛細静脈網は,やや直径の太い集合静脈に集められ,その後,房状卵巣の髄質を走行する主幹静脈に流入する,集合静脈は網目の粗い網状を呈し,静脈枝の吻合部には洞様構造が見られた.房状卵巣の髄質の中央部には直径の太い主幹静脈が走行し,その房状卵巣に分布する大部分の静線を集めて卵巣背側部に上行していた.卵巣背側部では,各房状卵巣から上行してきた主幹静脈はこの部位で互いに吻合して2~3本の直径の太い卵巣静脈に集められ,卵巣から排出していた.発達した卵胞の卵胞茎においては,2~4本の静脈が卵胞茎へ排出されると報告されている4).本実験では,卵胞の近位の卵胞茎では従来の報告と同様の所見が得られたが,卵胞膜から排出された複数の静脈は卵胞茎内で吻合して卵胞の遠位では1本の静脈となって房状卵巣に流入しているのを認めた.

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