日本畜産学会報
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ヤギの主要組織適合性遺伝子複合体class II領域の構造とβ鎖遺伝子構成
林 智人天野 卓
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1994 年 65 巻 5 号 p. 447-453

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抄録

ヤギの主要組織適合性遺伝子複合体(MHC) class II領域の構造とβ鎖遺伝子構成を把握するため,ウシclass II遺伝子のDRB, DQBおよびDIB遺伝子座を特異的に認識するR2-TM, B1-TMおよびI1-TMをプローブとしたRFLP解析を行なった.用いた3種のプローブ間では,同一サザンブロット上クロスハイブリダイゼーションは検出されず,各プローブがそれぞれ独立した遺伝子領域を認
識していることが判明した.また各プローブは,R2-TM/Taq Iで4.4-,3.3-および2.7-kbの3種,B1-TM/Pvu IIで4.8-および2.1-kbの2種,I1-TM/Taq Iで10.2-, 9.7-および7.6-kbの3種のフラグメントを検出した.これらのフラグメントは,いずれの組合せにおいても共優性であり,それぞれ同一遺伝子座に属する対立遺伝子を認識していることが示された.親子関係にある21頭を用い,3種の遺伝子座間の連鎖関係を調査したところ,DRBとDQB遺伝子座間においては完全な連鎖関係が認められた.また完全連鎖関係にあるDRB/DQBの2遺伝子座とDIB遺伝子座の間では組換えが起きており,その頻度は0.143であった.DRB/DQB遺伝子座間における4.4/4.8, 3.3/2.1および2.7/4.8の3種の対立遺伝子の組合せは,連鎖不平衡状態にあることが観察され,両親からハプロタイプとして遺伝していることが明らかになった.これらのことから,本ヤギ集団におけるclass II領域の構造は,DRBとDQB遺伝子座を含むグループと,DIB遺伝子座を含むグループの2つより構成され,染色体上少なくとも14.3cMの大きさを有していることが推察された.さらに,その2つのグループに挟まれた領域に高頻度で組換えの起るホットスポットの存在が示唆された.

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