日本畜産学会報
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選抜計画における近交度抑制方法の比較:Triboliumを用いた実験による検討
野村 哲郎岩崎 倫久光木 尚大島田 和宏
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1998 年 69 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

Triboliumを用いた2世代にわたる選抜実験により,選抜計画における近交度の抑制方法を比較検討した.比較した選抜•交配計画は次の4つである.I) 表現型選抜+ランダム交配,C) 最適な家系選抜指数による選抜+ランダム交配,CM) 最適な家系選抜指数による選抜+compensatorymating, CE) やや高めに設定した遺伝率を用いた家系選抜指数による選抜+ランダム交配.選抜の対象とした形質は21日齢のサナギ体重である.毎世代,雌雄各10個体を用いたペア交配を行い,各ペアから雌雄各4個体を測定した.それぞれの選抜•交配計画について,4回の反復実験を行った.得られたデータは,REML法によって分析し,遺伝率と各世代の遺伝的改良量を推定した.近交係数は,系図をもとにして計算した.得られた結果の概要は以下のとおりである.a) 実験の規模が小さかったために,遺伝率の推定値は0.00から0.88の間にばらついた.b) 最大の遺伝的改良量は計画Cで得られ,計画Iにおける遺伝的改良量は最小であった.計画Cと比較すると,計画CMおよびCEの遺伝的改良量は減少したが,その減少量は重大なものではないと考えられた.c) 2世代目の近交係数は,計画Cで最も高く(14.9%),計画Iで最も低かった(7.9%).計画CMおよびCEの2世代目の近交係数は,それぞれ10.6%および9.1%であった.集団の有効な大きさの2世代にわたる調和平均は,I, C, CMおよびCEでそれぞれ12.4,6.5,9.3および12.1であった.これらの結果から,短期間の選抜計画における近交度の抑制方法として,やや高あに設定した遺伝率を利用して選抜基準を設定することは簡便でしかも有効な方法であると考えられた.

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