日本畜産学会報
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胎子数および妊娠の進行が母牛の妊娠末期における飼料の消化管通過速度に及ぼす影響
西田 武弘栗原 光規寺田 文典柴田 正貴
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1998 年 69 巻 6 号 p. 599-604

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抄録

妊娠末期における飼料の消化率低下の要因を解明するため,黒毛和種受精卵を移植した経産ホルスタイン種雌牛の単胎牛を5頭,双胎牛を3頭およびホルスタイン種を妊娠中の経産ホルスタイン種雌牛の単胎牛を10頭用いて,妊娠210日および266日目に標識飼料を給与し,直腸糞を経時的に採取して飼料固相の消化管通過速度を測定した.飼料給与水準は単胎牛では母牛維持量のみまたは胎子1頭分増給し,双胎牛では胎子2頭分を増給する計3水準とした.単胎牛はほぼ計画給与量を採食したが,双胎牛では乾物摂取量が妊娠210日目の10.07kg/日から,妊娠266日目には9.11kg/日と減少した.子牛1頭当りの分娩時体重は単胎の方が大きかったが,双胎牛では2頭で平均61kgとなり単胎牛の40kgと比較して大きく,消化管が著しく圧迫されているものと予想された.単胎牛では,妊娠210および266日目のいずれにおいても給与水準の高い方が飼料の通過速度が大きく,また妊娠の進行によって通過速度がやや上昇する傾向がみられた.双胎牛では妊娠210日と266日の間で,飼料の消化管内滞留時間にはほとんど差はみられなかった.以上のことから単胎牛では,飼料の増給および妊娠の進行による飼料の消化管通過速度の上昇が観察され,妊娠末期における消化率の低下の要因のひとつである可能性が示唆された.双胎牛では,妊娠末期に乾物摂取量が減少したため,消化管の圧迫による影響が相殺され,妊娠の進行が飼料固相の通過速度に及ぼす明確な影響は認められなかった.

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