2001 年 72 巻 10 号 p. 579-586
ホルスタイン種育成雌牛の放牧時のエネルギー収支の解析方法について検討した.牧草の刈り取り前後差法と補助飼料より代謝エネルギー摂取量(MEI)を,放牧地での日増体量(DG)よりNRCの式を用いて増体に要した正味エネルギー量(NEg)を,放牧地での心拍数(HR)より,トレッドミル上で求めた熱産生量(HP)の心拍数(HR)に対する回帰式を用いてHPを求め,MEI=HP+NEgが成り立っかどうかで,エネルギー収支を検討した.4回の放牧試験でのMEIに対するHP+NEgの割合は,95.2,101.8,98.9,111.8%であり,DGがプラスの3回については,おおむねMEI=HP+NEgが成り立ち,回帰式より推定したHPを用いてエネルギー収支の解析ができると考えられた.一方,DGがマイナスの条件下ではNEgの算出は困難であり,MEIとHP+NEgの差も大きかった.放牧で本法を用いてエネルギー収支の解析を行うためには,NEg算出の基となるDGの測定期間中に採食量が極端に変動しないことが必要であると考えられた.