リアルオプションと戦略
Online ISSN : 2189-6585
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講演要旨、大会チュートリアルセッション講演、
ビジネススクール等における、M&A 後の事業戦略策定演習の 事例
小川 康
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2015 年 7 巻 1 号 p. 27-32

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抄録
M&A の成功・失敗の基準は、あいまい になりがちである。そもそも成功が明確に 定義されておらず、ディール(取引)の成 立・売上獲得だけが目的になっていること も多い。 そのような中でも、買収価格が高すぎる こと、すなわち「高値掴み」は、M&A 投 資の採算性を大きく悪化させる。つまり、 M&A 成功の条件の一つとして、当事者が 買収価格の妥当性を評価することができ、 買収価格が高すぎるときには、高すぎる、 と判断できる能力を持たなければならな い。 M&A は、単なる有価証券の売買ではな く、買収後に価値を実現する事業戦略を必 要とする。本演習では、買収後にどのよう な事業戦略を実行するかを検討し、その事 業戦略に基づくインカムアプローチのバ リュエーションを実践する。 具体的には、M&A 案件を題材としたケ ースに基づき、買収価格に対する感度分 析・モンテカルロシミュレーション・ What-If 分析等のビジネスシミュレーショ ンを駆使してグループディスカッション を行う。最終的に、グループごとに買収対 象事業の価値を決定し、M&A 実行可否に 関する意思決定を下す。 グループディスカッションの結果、グル ープごとに評価額が異なったり、M&A の 実行可否についてもグループごとに結論 が異なることが多いなど、現実のビジネス 環境に近い設定の演習である。なぜ同じ情 報を得ているにもかかわらず評価額や実 行の可否が異なるのか、人によってリスク の取り方が異なることなどを、演習の最後 に議論する。 M&A に限らず、事業の価値は、今後実 行する事業活動が生み出すものである。従 って、どのような事業活動が可能なのかを あらかじめ検討すべきである。しかし、事 業環境の認識の差、リスクの取り方の差に よって、妥当と考えられる事業戦略が異な ってくるのが現実である。 本演習では、正解の無いケース仕立てに することによって、自分と他の参加者の考 え方の違いに気づき、組織としてどのよう に意思決定を下すか疑似体験が可能であ る。また、複雑になりがちな議論を、短時 間で効率的に進めるた
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© 2015 日本リアルオプション学会
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