抄録
現代の社会・経済活動は、サプライチェー
ンやネットワークを介した水平分業が進み、
個々の企業や組織はそれぞれが担当する役
割やプロセスの最適化を図ることで、製品・
サービスの供給にかかわる全体最適が実現
されている。しかし、この仕組みの効率性は
大規模な災害や事故・事件の発生時には、被
害が地理的、時間的、経済的により拡大して
しまうことにも貢献してしまうという皮肉
な結果をもたらす可能性も増大させている。
実際、2011 年3 月に発生した東日本大震
災による基幹産業を中心とした重要なサプ
ライチェーン群の同時多発的な途絶は、上
記のような水平分業化による部分集中リス
クが認識されないまま効率性・生産性のみ
が追及された結果発生した、起こるべくし
て起こった現象であると言える。
また、分野は全く異なるが2010 年㋄に米
国ニューヨーク証券取引市場で発生したフ
ラッシュ・クラッシュ(金融商品の瞬間的暴
落)の事例では、高度に自動化されたネット
ワーク型社会の脆弱性が見られた。
高頻度かつ高速化(ミリ秒単位)され、
個々のシステムの所有者のそれぞれの最適
化を目指した証券売買プログラムどうしが
接続された証券市場において、ひとつのプ
ログラムの微小な「ゆらぎ」が瞬間的に連鎖
増幅された結果、市場を混乱に陥れた。
このことは、システム・オブ・システムズ
(system of systems)と言われるような、多
数の個別システム群が相互に連結された巨
大なシステムに、現代の社会経済活動が強
く依存していることをあらためて認識させるものであった。
このような連鎖被害の拡大の全てを事前
に想定し、備えることは不可能であるが、ど
のような状況に陥るか、といった「結果事
象」をベースに想定、準備を行うことで、多
様化するリスク(原因事象)そのもの自体に
過度に依存しない事業継続マネジメント
(BCM:Business Continuity Management)が
可能となる