抄録
破壊的イノベーションと、電力事業のビジネスモデル変革についてお話をさせていただきます。
電力システム改革によって、色々な企業が電気の小売業へ参入できるようになり、総括原価方式による料金認可制が廃止され、卸電力市場における流動性が増大するようになりました。その結果、新しいリスクが発生します。例えば、卸市場や小売市場において取引相手の倒産等により電気代を回収できないリスクであるとか、燃料価格や卸電力価格の変動により、当初期待していたリターンが得られなくなるリスクなどです。こうしたカウンターパーティリスクや価格リスクについては、電力会社をはじめ、色々な企業、機関が議論を深めてきました。ところが、最近、こうした“伝統的な”リスクとは異質の新しいリスクが登場してきており、今日は、この新しいリスク、非連続的な業界構造の変化に伴うリスクのお話させていただきます。レイトン・クリステンセン教授が提唱した「破壊的イノベーション」や「イノベーション・ジレンマ」は大変示唆に富む考察ですが、この論理は、情報通信業界のような技術革新のサイクルが短い業界に適用されるものであって、電力業界は、あのようなダイナミックな産業の構造変革とは無縁だと思っていました。それが実は、この電力業界でも、破壊的イノベーションが起こり得て、ドラスティックな変革が業界大で起こりうると思うに至っております。