抄録
はじめに:我々は先行研究で、対象者の96%が股関節の内外旋に5°以上の左右差があり、横坐りで上になる側の股関節の内旋と骨盤の左右の傾斜角との間に、統計学的な有意差が認められたことを報告した。その要因として日本式ADLの影響が示唆された。本研究ではADLの坐位に着目し、日常生活でよくとる坐位と股関節回旋可動域の関係について検討を行った。対象:対象は健常青年47人(男性23人、女性24人)であった。測定方法:本研究の趣旨説明および同意・署名は書面にて行った。測定方法は、ADLでよくとる坐位は余暇を過ごす時の姿勢を聞き取った後に記録し、股回旋位を基準に中間位(いす,正座等、以下第1群と略す)・外旋位(あぐら、以下第2群と略す)・左右非対称位(横坐り、以下第3群と略す)の3群に坐位を分類した。また、股回旋可動域は、日整会式に準じて左右の股関節の内旋・外旋を測定した。両上前腸骨棘を触診にて確認し基本軸とした。また、正確な測定のため十分に練習を行うえで1°単位で測定をした。右股回旋可動域から左股回旋可動域を引いて左右差も求めた。その後、3つの群に分けた坐位における、股回旋可動域および左右差の平均値の有意差を検討するため、ANOVA後にFisher’s PLSDを有意差5%にて行った。結果:坐位を3つの群に分類した結果、第1群が25名、第2群が14名、第3群が8名であった。股回旋可動域の平均値は、内旋は第3群が左右とも最も小さく、最も大きかったのは左右とも第1群であった。それとは反対に外旋は第1群が左右とも最も小さく、最も大きいのは左右とも第3群との結果となった。また、すべての群において外旋が内旋より大きかった。股回旋可動域の左右差の平均値の最小値は内旋外旋ともに第1群であった。左右差はすべての群で外旋より内旋で大きかった。Fisher’s PLSDの結果は、第1-2群間で左股内旋がp=0.0875、同じく第1-2群間で内旋の左右差がp=0.0565、第1-3群間で左股外旋がp=0.0730とはなったが、有意水準5%では差がないとの結果が出た。考察:今回の検討では、統計学的に有意差が見られなかったが、日常左右対称な坐位をとるものは内旋が大きく、非対称な坐位をとるものは外旋が大きくなる傾向がみられた。また、第2群が他の2群よりも大きい外旋を有すると思われたのだが、結果的には第3群が最も大きい外旋を有していた。坐位における股屈曲角や骨盤の後傾角は対象者によって様々であると思われる。そのため、股周囲の靭帯や筋緊張の影響を受けるため仮説とは違う結果になったと思われる。今回の結果ではADLでの坐位と股回旋可動域の間に統計学的な関連を見出せなかったが、股回旋可動域が坐位に与えるの影響は少なからずあると思われる。今後は対象者を増やし幅広い年齢層でデータを収集し、検討を深める必要があると思われた。