抄録
<はじめに>足底挿板挿入の効果として、最近では、動的機能への影響についても多くの研究がされ、特に歩容の改善、歩行スピードの改善等の報告がされている。しかしそれは、変形性膝関節症等の疾患を持った方についての効果を示したものが多いようである。現在、一般に健常とされている人の中でも、静的アライメントの左右非対称性を見受けることが多々ある。よって、今回は一般的に健常といわれる人の左右非対称性の改善を目的に、足底挿板を挿入した時の、歩行に対する影響を明らかにすることを、研究目的とした。<対象>対象は下肢に整形外科的疾患の既往のない健常成人9名(男性4名、女性5名)であり、平均年齢は23.7± 1.4歳、平均身長は167.1± 8.9 cm、平均体重は61.9±13.3 kgであった。<方法>使用した足底挿板は、グラスファイバー製のものにフェルトにて微調整を加えたものを作成した。この足底挿板挿入、非挿入の2条件にて、自由速度・自由速度よりもゆっくり・最大速度の3条件での10m歩行、三次元動作解析装置内の床反力計上での自由歩行を行い、歩行速度、歩数、歩行率、歩幅、歩行1周期中の重心の左右・上下移動範囲、股・足関節モーメント、床反力前後成分、足関節まわりのパワーを算出した。手順として、10m歩行は前後に3mずつの助走距離をとった歩行路にて、3条件の速度の歩行を、足底挿板挿入、非挿入の条件にて、3回ずつ行った。計測はすべて1検者が行った。施行順序はランダムとした。また、三次元動作解析装置内の計測は、12個の光点をつけ、床反力計上にて自由速度での歩行を行った。 統計処理は、足底挿板挿入、非挿入の2条件間で対応のあるt検定を行い、危険率5%未満を持って有意とした。<結果>自由速度、自由速度よりゆっくりな速度にて、足底挿板挿入により、速度の増加がみられた。また自由速度にて、歩数の減少、歩幅の増大がみられた。歩行1周期中の重心の左右・上下移動範囲、股・足関節モーメント、床反力前後成分、足関節まわりのパワーにおいては2条件間で有意差はみられなかった。<考察>足底挿板挿入により、足趾屈曲筋力の増大が見られ、また足趾屈曲筋力の増大は歩行速度を増加させるとの報告がある。今回、足底挿板挿入により、歩行1周期中の重心の左右・上下移動範囲、股・足関節モーメント、床反力前後成分、足関節まわりのパワーにおいて2条件間で有意差がみられなかったにも関わらず、歩行速度の増加が見られたのは、そのような床反力等に影響の少ない因子の関与しているのではないかと考える。