抄録
【はじめに】 足位をはじめとする足部の状態が骨盤、脊柱、頭位に至るまでその上部へ及ぼす影響は良く知られている。臨床上、その運動連鎖は評価、治療にあたり注目すべき点であるといえる。今回,足位の変化により生じる静止立位時のアライメント変化と、その後の動作の変化を特に前後屈動作時の骨盤、腰椎に着目し、その影響について検討した.【対象と方法】 対象者は既往のない健常者男子7名(平均年齢:24.3±0.5歳)とした.測定開始肢位は、自然立位、足位TOE OUT30゜(以下OUT)、足位TOE IN20°(以下IN)の3肢位とし、任意の速度で各々前後屈動作を行わせた。測定方法は、動作中の各マーカーの三次元位置を三次元動作解析装置(OXFORD METRICS社製VICON370)を用いて計測した。マーカーの取り付け位置は、第1腰椎(L1)・第3腰椎(L3)・第5腰椎(L5)・両側の腸骨稜・上後腸骨棘(PSIS)の各体表面上とした.測定項目は、腰椎角度(L1-L3-L5)、骨盤の前後傾(S2とPSISを結ぶ線が水平面となす角)、骨盤の移動量(水平面上でのS2の移動量、以下Sway量)とした.【結果】静止立位時のアライメントは、INにおいて最も骨盤前傾・腰椎伸展を示した。前屈動作時、最も骨盤が後方にSwayする傾向を示したのはINであり、後屈動作時に最も前方へSwayする傾向を示したのはOUTであった。前後屈動作における骨盤傾斜運動量が最も大きい傾向にあったのは自然立位であった。後屈動作における骨盤後傾量はIN時に最も小さい傾向を示した。【考察】静止立位時のアライメントでは、TOE INで股関節が内旋位となり、それに伴い骨盤前傾・腰椎伸展がおこる。TOE OUTでは股関節が外旋位となり、骨盤後傾・腰椎屈曲がおこる。前後屈ではこの姿勢を基本として、動作を行うことになる。前屈では、TOE INで後方Swayが大きくなり骨盤前傾運動量が少なくなる傾向があった。これは静的立位で既に骨盤前傾位であることと、足位により後方支持面を作りやすい状態となるため骨盤が後方にSwayしているのではないかと考えられる。逆に、後屈では、TOE OUTで股関節伸展が行いやすい肢位であることと、足位により前方支持面が形成しやすい状態となるため、前方Swayが大きくなったのではないかと考えられる。以上のことから、足位の変化により股関節および足部での姿勢制御の様式も変化していることが推測される。今回の結果より、足位の変化が骨盤と腰椎の肢位に変化を与え、その後の動作における水平面・矢状面の運動量に影響を与えることが示唆された。