抄録
【はじめに】疼痛性踵部パッド(Painful Heel Fat Pad)と、同じ踵部の痛みを主訴とする足底腱膜炎とは基本的に疼痛部位と出現場面が異なる。しかし、解剖学的な位置関係から診断上混同されることが多く、この病態に対する報告や社会的認知は非常に少ない。今回、当院足外来で疼痛性踵部パッド症と診断された複数の患者の加療の機会を得、本疾患の特徴に即した簡便なテーピングを考案したので報告する。【病態】疼痛の出現部位は踵部後・外側から中央部であり、出現場面は荷重時、特に踵接地期に多い。慢性期では、疼痛を回避する歩行を習得するに従い、起床時や歩行開始第1歩目に出現しやすい。ジャンプなどの着地や肥満老人に多いとの報告もあるが、年齢・性別および体重に関する一定の傾向や踵部への過度のストレスや踵部の外傷の既往はない。しかし、足部の計測によって得られた足囲(width)では、全ての症例がC以下と非常に細い足を有していた。さらに、前医で処方された衝撃吸収用装具などでも症状を改善するには至らなかった。 したがって、これらの患者では自前の衝撃吸収機構としての踵部パッド自体が扁平化し、十分機能していないため側方から圧迫して、これを補助する必要がある。しかし、これらの患者では非常に細い足囲のため、十分な側方からの圧迫力を有する履物を購入することが困難なため、テープによる側方からの圧迫を試みた。【方法】アンダーラップを設置した後、38mmホワイトテープを用い、アンカーを設置。踵部を側方より圧迫するようにアンカー内側より外側へ2重にテープを設置した後、再びアンカー部をロックにて固定した。【結果】テープ設置直後より荷重痛・圧痛ともに消失した。同意を得られた1症例のテープ設置前・後の床反力計での歩行解析では、歩行速度の上昇、ストライド長の延長、踵接地期における鉛直・前後分力の上昇が認められた。また、指導した全ての症例において、疼痛が沈静化するまでの間、自力にてテープを設置、疼痛のコントロールが可能であった。【考察】疼痛性踵部パッドの治療には、ヒールカップ装具や衝撃吸収装具の着用が一般的であったが、市販の履物の着用、疼痛出現場面としての起床時への対応が困難であった。しかし、今回考案したテーピングは、非常に簡便であり、自力にてこれらの問題にも対応可能であり、本疾患の治療には有効であると考えられた。