抄録
【はじめに】今回、複合性局所性疼痛症候群(CRPS)慢性期患者に対して理学療法を行う機会を得たので報告する。
【症例】21歳男性。H13.4.30交通事故にて右大腿骨・右前腕骨折、脳挫傷にて約1ヵ月間意識障害持続。意識回復後、右足関節より遠位に疼痛・発汗異常、浮腫などを認め、CRPSと診断。H14.2.12腰部交感神経切除術を施行。疼痛は若干減弱、発汗異常は解消するも、依然として疼痛、関節可動域(ROM)制限、血行障害が残存。H14.4.10当院での理学療法開始となった。
【理学療法開始時所見】右足関節遠位部にアロディニア(異痛症)・痛覚過敏を認め、足尖にかけてより著明になる。患肢の足底接地・荷重は困難。座位時にも常に股・膝・足関節を屈曲し足底を接地しないようにしている状態であった。ROM制限は股関節伸展R-20°膝関節伸展R-45°L-40°足趾の屈曲拘縮は著明であった。また、患部に血流・皮膚温低下、色調変化を来し、両上肢・左下肢の末端にも異常発汗が認められた。
【active中心の理学療法経過】まずactiveに足関節のROMexを行うことから開始した。疼痛を引き起こさない範囲で足関節の底背屈運動を行い、前脛骨筋の過剰な緊張を落とした。足関節背屈位保持により起こる腱の固定作用をゆるめることで、足趾の伸展を引き出した。約1ヵ月後、足関節の動きが出て来たことで動脈への圧迫を解消、血流が改善した。特に踵部での改善を認め、座位では意識的に踵接地することが可能となる。荷重能力は不十分で、立位時患肢への荷重はわずかであるにもかかわらず痛みの訴えが持続していた。しかし、さらに血流が改善するにつれ疼痛の訴えは減少し、約2ヵ月後交互式四脚歩行器にて歩行可能となる。この際患肢踵部が軽く接地するのみで荷重はされていなかった。
【passive中心の理学療法経過】アロディニアは減少してきていたものの、わずかな刺激により下肢の屈曲反射が出現していた。そのため 4ヵ月後より塩酸モルヒネの服用により疼痛を管理しpassiveなROMexを開始した。その結果ROM制限は膝関節R-15°L-20°へ改善、足趾の屈曲拘縮の改善がみられた。足底〜足趾にかけてのアロディニアも減少し、触刺激に対応できるようになり、両松葉杖での歩行が可能となった。座位では足尖の接地可能。立位では踵部の荷重が主体であるが疼痛はなく、6ヵ月にて片松葉杖にて歩行可能となった。
【考察】慢性期CRPS患者に対しactiveな運動を行っていくことで患部の血流・ROMの改善を図ることができた。さらに薬剤による疼痛コントロール下で積極的にROMex、荷重練習をすすめることにより、不動、循環障害、交感神経の異常反射、疼痛への恐怖という悪循環からの離脱を促進させることができ、歩行能力の獲得につながった。