理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DO826
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
腰椎椎間板ヘルニア患者における腰椎の運動時痛と臨床症状・ヘルニアの部位・病型の関連
*蛯子 智子対馬 栄輝武田 さおり齊藤 千恵美鈴木 樹里三戸 明夫
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抄録

【緒言】腰椎椎間板ヘルニア(ヘルニア)患者では,一般に下肢伸展位での腰椎前屈により神経根が伸張され疼痛が出現する。さらに,下肢屈曲位での腰椎前屈や腰椎後屈で疼痛が起こる症例も多い。これらの現象別に病態や症状の特徴を理解することは理学療法においても有益な情報となる。そこで,下肢屈曲位での腰椎前屈または腰椎後屈における疼痛の有無と,他の臨床症状,ヘルニアの部位・病型の間で,どのような関係があるか検討した。【対象と方法】対象は手術適応となったヘルニア患者18名(男性12名,女性6名,平均年齢27.7±7.5歳)であった。術式は全てLOVE法であった。高位はL4/5,L4/S1,L5/6,L5/S1とした。50歳以上の者,腰椎すべり,変性,不安定性を合併している者,2椎間以上にヘルニアがある者は除外した。 対象が手術を受ける前に,腹臥位でon hands(後屈)及び端坐位で体幹を前屈(前屈)させた時における疼痛の有無と部位を確認し,後屈で疼痛がある者(後屈群)と前屈で疼痛がある者(前屈群),更に後屈及び前屈共に疼痛がある者・ない者(その他の群)の3つに分類した。臨床症状として,安静時の腰痛の程度,安静時の下肢痛又はシビレ(下肢痛)の程度と部位,疼痛が出現してからの期間,SLRの角度,下肢の筋力(前脛骨筋,長母趾伸筋,腓骨筋,腓腹筋のMMT)と知覚障害(pin prick法)を評価した。腰痛,下肢痛の程度は日整会腰痛疾患治療成績判定基準に基づいて4段階に,SLRは30から70°,30°未満の2段階に分類した。下肢痛の部位は久野木ら(1993)の区分を参考に下肢を8領域に区分した。術前のMRI又は手術記録から,ヘルニアの部位と病型を詳細に確認した。ヘルニアの部位は正中,傍正中,傍正中から神経根直下,神経根直下,腋窩に,病型はsubligamentous extrusion,transligamentous extrusion,sequestrationに分類した。統計的解析にはKruskal Wallis検定とχ2検定を適用した。【結果】後屈群7名,前屈群7名,その他の群4名で,性別,年齢,ヘルニアの高位には有意差はなかった。臨床症状の項目については,安静時の疼痛又はシビレの部位が前屈群で有意に腰部と大腿外側に多かった(p<0.05)。その他の項目については全て有意差はなかった。【考察】前屈群では腰痛と大腿外側痛又はシビレが有意に多かったのは,ヘルニアによる硬膜嚢又は神経根への圧排が強いためと推測するが,ヘルニアの部位及び神経学的所見とは有意な関連はなかった。腰痛については神経根のみでなく交感神経を介した疼痛や筋,椎間関節の影響もあるためと考える。腰椎の運動痛にはヘルニアと神経根の位置関係や後縦靭帯の張力の影響だけでなく,腰椎の可動性や腰背筋の筋内圧などの影響も混在すると考え,今後,対象数を増やし,引き続き検討を行う必要がある。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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