抄録
【はじめに】肩関節亜脱臼は片麻痺患者の80%に発生し、発症後3週以内で起こるという報告もある。亜脱臼位で組織が伸張されると機能障害が生じる可能性があり、予防が重要と考える。神経筋電気刺激(Neuromuscular Electrical Stimulation:NMES)による亜脱臼改善の報告もあるが、予防を目的にした研究は少ない。我々は無作為臨床研究を実施中であり、その途中経過を報告する。【対象と方法】12段階片麻痺回復グレ-ドが5以下の脳卒中症例を対象とした。重度の痴呆、心疾患、NMESを拒否する症例をはずし、症例を層化無作為割付けでNMES群(8症例)とコントロ-ル群(8症例)に割り当てた。NMES群は通常のPTにNMESを実施、コントロ-ル群は通常のPTを実施した。クロスオ-バ-可能であったのは4症例であり、2症例をNMES群から開始し、途中でNMESを中止した。残りの2症例はコントロ-ル群から開始し、途中でNMESを追加した。1.NMESミナト医科学社製Dynamid DM2500とAXELGAARD社製電極PALSを使用した。三角筋後部線維と棘上筋の運動点を探索し、運動点と筋の停止部に電極を設置した。搬送周波数2500Hz、治療周波数40から75Hz、通電時間10sec、休止時間2secで1日に5時間、週5日実施し、亜脱臼が整復される最小の出力で実施した。2.測定(1)亜脱臼:X線透視下撮影で症例を坐位にし、上腕骨頭の頂点と関節窩下縁との垂直距離(RX2D)を測定した。(2)運動麻痺:12段階片麻痺回復グレ-ドで測定した。(3)筋緊張:肘屈筋をModified Ashworth Scaleで測定した。(4)ROM:ゴニオメ-タ-で屈曲、外旋、外転を測定した。亜脱臼は2,4,6,7,8,10週目に各々測定し、その他は週1回測定した。(5)筋萎縮:メジャ-で腋窩から上腕骨長軸に対して垂直に上腕周径を測定し、非麻痺側から麻痺側を引いた値を測定した。【結果】ROMとRX2DはNMES群で有意に大きく、筋萎縮はNMES群で有意に小さかった。運動麻痺、筋緊張の有意差はなかった。また、NMES群から開始し、NMESを中止すると亜脱臼が出現した。コントロ-ル群から開始し、NMESを追加すると進行しつつある亜脱臼が改善した。クロスオ-バ-前後での運動麻痺、ROM、筋萎縮の目立った変化はなかった。【考察】亜脱臼、ROM、筋萎縮については2群間に有意差があり、NMESによってアライメントが保たれ、筋収縮が維持され効果的に作用したと考える。クロスオ-バ-群における変化からも亜脱臼改善に効果的に作用したことが示唆された。しかし、亜脱臼を改善しても、すぐにはROMは改善されなく、初期からの亜脱臼予防の重要性が示唆されたと考える。