理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP131
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
体幹同時収縮運動が股関節屈筋群の筋力および骨盤傾斜角度に及ぼす影響
*宇於崎 孝山崎 敦分木 ひとみ砂川 勇
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抄録

【はじめに】体幹や四肢の運動において,腹横筋は主動作筋の収縮開始前に収縮するといわれている.この腹横筋の収縮が,腰痛症では遅延するといった報告がなされている.このような状態で,体幹や四肢の運動を行うことは,脊柱への力学的ストレスを増加させ機能異常を増悪させるおそれがある.そこで今回,体幹同時収縮運動(以下Ex)により腹横筋の筋収縮を促すことで,端座位での股関節屈筋群の筋力および骨盤傾斜角度の変化を検討したので報告する.【対象と方法】対象は,日常的に腰痛を経験していない13名(男性5名,女性8名)とした.平均年齢は,24.8±4.4歳であった. 筋力測定は,Cybex社製Cybex770-NORMを用い,Ex前後の股関節屈曲トルクを5秒間最大等尺性収縮にて3回測定した.測定肢位は,端座位にて体幹を屈曲・伸展中間位として上肢を腹部前方に組んだ.得られた結果から,最大トルクおよび最大トルクの体重比(以下%BM)を算出した.骨盤傾斜角度の計測は,3次元動作解析装置(アニマ社製ローカス3D)を用いEx前後で行った.計測肢位は,端座位で被験者の上前腸骨棘と腸骨稜最上端を結んだ線と,床面から成す角度より骨盤傾斜角度を算出した. Exは,まず背臥位で腹横筋を正確に収縮させることから始めた.充分に腹横筋の収縮感覚が被験者に理解された後に,四つ這いにて一側上肢と反対側の下肢を水平位に伸展し,5秒間保持させた.これを左右各5回行った.統計学的処理は,Ex前後の股関節屈筋群の最大トルク,%BMおよび骨盤傾斜角度の比較を,対応のあるt検定を用いて危険率5%未満で有意差を求めた.【結果】最大トルクは,Ex前の14.7NmからEx後の16.8Nmへと増加し,%BMにおいても,25.8%から29.0%へと増加が認められた(p<0.05).骨盤傾斜角度は,Ex前の27.9°よりEx後の20.9°へと減少し(p<0.01),骨盤前傾角度の増加が認められた.【考察】腹横筋は,胸腰筋膜の中間層と後部層の深部に広く付着することで,腰椎の伸展モーメント産生を援助するといわれている.このことから,腹横筋の収縮を促すことで骨盤後傾位の端座位姿勢を,前傾位へと変化させることが可能と考える.また両側性に腹横筋が収縮すると,腹壁を引っ張り腹腔内圧が増加し,腰椎を安定させる.このことから,Exにより腹横筋の収縮を促すことで,腹横筋が体幹の安定化に働き,脊柱や骨盤に起始を持つ股関節屈筋群の筋出力が増加したと考える.

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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