理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP132
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
学生ゴルフ選手と健常学生における腰椎回旋可動域の解析
*五十嵐 宣博大森 圭宮本 重範
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抄録

【目的】ゴルフスイングは同一方向の動作を繰り返すため、身体の非対称を起こす可能性が指摘されている。本研究ではスイングの軸といわれている脊柱のうち腰椎回旋に着目し、ゴルフスイングが回旋可動域に影響しているかを明らかにすることを目的とし、学生ゴルフ選手と健常学生の可動域測定を行い、比較・検討した。【方法】対象は大学ゴルフ部員8名(平均年齢21.9±2.0歳、平均身長173.3±5.4cm、以下G群)、と健常大学生13名(平均年齢22.8±1.3歳、平均身長171.9±5.0cm、以下N群)の計21名の男性とした。対象には研究の目的・方法について説明をし、同意を得た。G群のゴルフ歴は28.0±11.5ヶ月、練習頻度は週2±0.5回であり、自己申告のベストスコアは101.1±10.7、アベレージスコアは109.6±10.5であった。 測定は直立位、腰椎最大伸展位、腰椎最大屈曲位を開始肢位として、自動運動にて体幹を左右に最大回旋してもらい、超音波式三次元動作解析システムZebris CMS70P(Zebris社製)を用いて腰椎回旋角度を計測した。【結果】直立位での右回旋角度はG群15.4±3.7度、N群18.3±5.0度、左回旋角度はG群17.9±5.1度、N群16.6±3.9度で、両群に有意差は認められなかった。腰椎最大伸展位での右回旋角度はG群9.9±3.2度、N群11.0±3.7度、左回旋角度はG群11.2±5.2度、N群14.4±6.1度で、両群に有意差は認められなかった。腰椎最大屈曲位での右回旋角度はG群11.9±5.2度、N群14.1±3.6度、左回旋角度はG群9.1±19.2度、N群9.9±4.5度で、両群に有意差は認められなかったが、両群とも右回旋が左回旋よりも有意に(G群:p<0.05 N群:p<0.01)大きかった。 なお、腰椎最大伸展角度はG群11.1±6.76度、N群14.5±6.67度で、両群に有意差は認められなかった。腰椎最大屈曲角度はG群26.0±8.68度、N群27.6±13.68度で、両群に有意差は認められなかった。【考察】G群は経験年数が平均28ヶ月と少なかったことや、明らかな脊柱の非対称性や腰痛がない者を対象としたため、両群間に差が認められなかったと考えられた。しかし、経験年数の多いゴルフ選手は椎間関節障害が認められるとの報告もあり、今後は多経験年者や上級者との比較も必要であると考える。腰椎最大屈曲位で右回旋が大きくなった一因として対象が全員右利きであったことが考えられるが、今回の研究では理由を説明するには限界があり、今後の課題となった。一般的な認識ではゴルフスイングの際、腰をひねるということが強調されているが、腰椎は回旋要素に乏しく、無理に回旋することは腰部障害の一因となる可能性が示唆された。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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