理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP135
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
屈曲型及び伸展型腰痛症における股関節可動域の比較
*花田 定晴岡戸 敦男濱野 武彦平野 佳代子宮下 浩二小林 寛和
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キーワード: 腰痛症, 股関節, 関節可動域
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抄録

【はじめに】  腰痛の発生は、様々な身体機能の低下が相俟って腰椎-骨盤リズムの乱れなどを生じさせることが問題となる。それが動作時の問題を誘発させ、痛みの発生につながると考えられる症例を多く経験する。その中で、特に股関節の可動域制限は腰痛を誘発する重要な要因の一つである。 今回は腰痛の発生要因の一つである股関節の関節可動域に限定し、動作時の痛みの発生パターンとの関連を定量的に調査した。【対象と方法】 対象は平成4年4月より平成14年10月までに当所にて腰痛症と診断され、理学療法を実施した男性179名とした。 対象を体幹運動の方向と痛みの発生の関係から_丸1_体幹屈曲時に痛みが生じる屈曲型、_丸2_体幹伸展時に痛みが生じる伸展型に分類(川野)した。また、この2項目に分類されないものは対象から除外した。内訳は、屈曲型52名(年齢21.6±9.7歳、身長171.2±5.1cm、体重64.1±11.8kg)、伸展型127名(年齢19.7±8.4歳、身長169.6±8.8cm、体重63.9±14.1kg)であった。 理学療法記録より下肢伸展挙上(以下、SLR)、股関節伸展、外旋、内旋の関節可動域を調査し、各々の項目について屈曲型と伸展型の間で比較した。検定はt検定を用い、有意水準5%未満とした。【結果】 関節可動域の平均値はSLRでは屈曲型74.9±11.1度、伸展型77.9±10.9度であり有意差がみられた(p<0.05)。 伸展可動域は屈曲型10.0±4.5度、伸展型10.3±4.4度であり有意差はみられなかった。 外旋可動域は屈曲型50.1±12.0度、伸展型49.1±10.8度であり有意差はみられなかった。 内旋可動域は屈曲型26.0±10.8度、伸展型29.7±12.8度であり有意差がみられた(p<0.05)。【考察】  屈曲型は伸展型と比較しSLRと内旋において関節可動域制限がみられた。これはハムストリングスや股関節外旋筋などの伸張性の低下により骨盤が後傾し、体幹屈曲時に骨盤前傾及び股関節屈曲が制限され、腰背部への応力が高まり、痛みの発生につながると考えられる。 伸展型は一般的に腸腰筋などの股関節屈筋群の伸張性低下により、股関節の伸展可動域制限を生じ、体幹伸展時に骨盤が前傾して痛みの発生に影響すると述べられているが、今回の結果からは顕著な可動域制限はみられなかった。伸展型は股関節の関節可動域制限に比して、他の要因の関与の大きさが伺える。

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