理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP137
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
脊柱側弯症術後早期理学療法の効果
アンケート調査より
*楞田 眞弘大野 博司八幡 元清山口 淳藤原 憲太小阪 理也瀬本 喜啓
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抄録

【目的】当院では、脊柱側弯症術後の立位歩行練習を従来は術後1週間で行っていたが、1999年1月以降は術後可及的早期に行っている。現在までに早期理学療法を実施した34例では、ベッド端座位が1.7日(従来は7.6日)、歩行器歩行が3.1日(従来は9.6日)とより早期に基本動作が達成できていた。しかし、患者の立場からの評価が不十分なため、今回、アンケート調査によって早期理学療法の効果について評価を行った。【対象・方法】1999年から2002年までに当院で脊柱側弯症に対して早期理学療法を施行した患者34例を対象に、郵送による無記名のアンケート調査を行った。座位の食事、病棟トイレの使用、立位歩行の各開始時期及び総評の4項目に関しては、(1)「もっと早い方が良かった」(2)「ちょうど良かった」、(3)「もっと遅い方が良かった」の3段階で評価した。また、社会復帰の時期に関して、「1か月後」、「2か月後」、「その他」で評価した。【結果】アンケート回収率は50%であった。食事の時期については、(1)が1名、(2)が9名、(3)が7名であった。トイレの時期については、(1)が2名、(2)が13名、(3)が2名であった。立位歩行の時期については、(1)が2名、(2)が13名、(3)が2名であった。総評は、全例とも(2)であった。社会復帰に関しては、1か月後が9名、2か月後が3名、その他が4名(6日後、1週間後、3週間後、1か月半後)、無回答が1名であった。【考察】トイレに関しては、「ちょうど良かった」と答えた者が13名と76%に達していた。脊柱側弯症患者には思春期の女子が多いため、ベッド上ではなく、早い時期に病棟トイレを使用したいという気持ちが強かったものと考えられた。それに対し、食事動作では、「もっと遅い方が良かった」と答えた者が7名に達しており(平均1.7日)、座位そのものに負担を感じる者も多かったのではないかと考えられた。立位歩行に関しては、「ちょうど良かった」と答えた者が13名と76%に達しており、歩行器歩行(平均3.1日)に対する負担感より、歩行能力を獲得できたという達成感の方が大きかったものと考えられた。食事、トイレ、立位歩行の3項目で「もっと遅い方が良かった」と答えていた者も含めて、17名全員が総評としては「ちょうど良かった」と答えており、患者の立場からみた早期理学療法の妥当性を実証できたと考えられた。社会復帰に関しては、無回答を除く16名が2か月以内に復帰していた。従来のスケジュールを受けた患者に対して同様の質問を行ったアンケート調査では1)、2か月以内であったと答えた者が84%であり、それと比較しても社会復帰に遅延はなく、早期理学療法の負の影響はなかったものと考えられた。【文献】1)楞田眞弘 他:脊柱側弯症患者における術前後の状態に関する意識調査.日本私立医科大学理学療法学会誌20:2002(投稿中)

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