抄録
【目的】本研究の目的は呼吸リハビリテーションの長期効果を明らかにすることである.【対象】GOLDに基づきCOPDと診断された患者のうち,呼吸リハビリテーションを実施した24名を対象(Pulmonary Rehabilitation,PR群)とし,呼吸リハビリテーションを実施していない8名を対照群(Control,CR群)とした.年齢はPR群73.0歳(57‐85)CR群75.8歳(69‐85),%FEV1.0はPR群52.3%(stage1:1名,stage2A:11名,stage2B:11名,stage3:1名)CR群65.2%(stage2A:7名,stage2B:1名),喫煙指数(喫煙年数×1日喫煙本数)はPR群1688 CR群1580であり両群間に有意差を認めなかった.【方法】PR群に対して1週間に1回合計10回の外来通院による呼吸リハビリテーションを実施した.内容は歩行訓練・上下肢筋力強化訓練等の運動療法を主軸としたもので,他に患者教育・在宅自己訓練の指導を重視した.プログラム終了後は定期的な外来通院により在宅自己訓練の継続を支援した.プログラム導入に伴いPR群とCR群の2年間にわたる肺機能検査値・体重・6MD・ADL(千住らの方法)・BDI・QOL(木田らの方法)の変化を比較した.また導入前後2年間の入院日数並びに救急受診回数を比較した.さらに面接により得られた在宅自己訓練の実施状況をもとに,PR群を2年間在宅自己訓練を実施した14名(A群)と途中中断した10名(B群)に分類し効果を比較した.統計処理はWilcoxonの符号付順位検定(vs Baseline),反復測定分散分析(vs Control)にて分析し危険率5%未満を有意と判断した.【結果】6MD・ADL・BDI・QOLはPR群において6ヶ月から18ヶ月まで有意に増加し,その後低下傾向を示したが,CR群と比較すると2年間の変化に6MD・BDI・QOLで有意差を認めた.一方A群の変化は18ヶ月以上においても有意に増加し,B群と比較して長期的に効果が持続した.体重はPR群において変化を認めなかったが,CR群と比較すると2年間の変化に有意差を認めた.A群とB群の変化には有意差を認めなかった.肺機能検査値・前後2年間の入院日数・救急受診回数に有意差を認めなかった.【考察】COPDに対する外来通院による呼吸リハビリテーションは長期的に効果が期待できると考えられた.加えて在宅自己訓練の有無が長期効果を左右する要因として考えられた.