理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP244
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
上肢のアライメントと前腕回旋可動域および皮皺の関係
*尾崎 尚代山口 光国大野 範夫筒井 廣明
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抄録

<目的> 上肢運動器疾患症例の評価としてアライメントは重要である。また、皮皺は、その下部構造である関節と一定の位置関係を有するといわれており、関節の運動方向に影響を受けると考えられ、臨床上、前腕の回旋運動に制限を呈する症例の中に、皮皺に特徴を有する症例を多く経験する。そこで今回我々は、上肢のアライメントと前腕の回旋可動域および肘関節と手関節部に生じる皮皺の関係について調査し、若干の知見を得たので報告する。<方法> 上肢運動器疾患を有し、当院整形外科に通院加療している症例8名9肢(男性2名、女性6名、年齢66.00±9.30歳、以下、症例群)を対象に、本調査の主旨に同意を得た上で、水準計を用いて計測した。また、対象群として上肢に既往のない健常者6名12肢(男性2名、女性4名、年齢27.50±3.62歳)についても計測した。計測項目は、安静立位における前額面上の、上腕骨長軸、前腕長軸、第3中手骨長軸、肘関節部皮皺、手関節部皮皺の各角度とし、(1)上腕骨に対する前腕の作る角度(上腕骨‐前腕角)、(2)上腕骨に対する肘関節部皮皺の作る角度(肘皮皺角)、(3)前腕に対する第3中手骨の作る角度(前腕‐手角)、(4)前腕に対する手関節部皮皺の作る角度(手皮皺角)を算出し、比較検討した。なお、皮皺は、肘関節屈曲および手関節掌屈時に一番深く生じるものとし、肘関節部は外側の、手関節部は内側の角度を測定した。また、前腕の回内・回外可動域は肘関節90度屈曲位における遠位橈尺関節面で測定した。<結果> 症例群の上腕骨‐前腕角は170.56±6.93度、肘皮皺角は75.89±7.80度、前腕‐手角は186.56±8.83度、手皮皺角は68.78±8.98度、回内53.33±43.40度、回外89.22±17.11度であった。また、健常者の上腕骨‐前腕角は172.08±5.07度、肘皮皺角は84.17±7.48度、前腕‐手角は185.08±4.44度、手皮皺角は77.92±5.78度、回内83.75±6.91度、回外94.17±10.07度であった。両者間の上腕骨‐前腕角、前腕‐手角および回外可動域に有意な差はなかったが、回内可動域と肘皮皺および手皮皺については有意差が認められ(p<0.05)、健常者に対し症例群では、肘皮皺は上腕に対して外側方向へ、手皮皺は前腕に対して内側方向へ傾いており、回内可動域が小さかった。<考察> 今回の結果から、上腕‐前腕‐手のアライメントに大きな相違はなかったものの、肘関節部および手関節部に生じる皮皺の傾きおよび回内可動域は有意に異なることから、上肢運動時における前腕での、特に尺骨に対する橈骨の可動性が関与していることが考えられ、上肢の一部に障害があることで、上肢運動時に肘関節外反、手関節尺屈の要素が多くなることが推測できる。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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