理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP249
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
乳癌術後の理学療法経過について
乳房切除術と乳房再建術の比較
*松尾 健一田中 真紀
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抄録
【はじめに】当院では乳癌の手術として、乳房切除術・乳房温存術・乳房再建術が施行されている。乳房再建術は乳房切除術と併せて行われ、これは手術中にシリコン製バッグの組織拡張器、いわゆるtissue expanderを大胸筋下・腹直筋上部に留置する方法である。手術後、expander内に生理的食塩水を徐々に注入し、機械的に皮膚を伸展して再建に供する方法であり、十分な皮膚の伸展が得られたら後日expanderを人工乳房に入れ替える手術が行われる。今回、乳房切除術とexpanderによる皮膚進展中、乳房再建術との術後理学療法経過を調査・比較したので報告する。 【対象】当院で術後理学療法を施行した入院患者36名。内訳はA群として乳房切除術であるAuchincloss術のみ施行群18名、平均年齢50.0±5.7歳。B群としてAuchincloss術中にexpanderを留置された乳房再建術施行群18名、平均年齢41.9±6.9歳。【方法】入院カルテより術後理学療法開始時期、初回および2週目の術側肩関節屈曲角度、上肢動作に対する不安・疼痛の有無、以上を調査した。なお統計処理として理学療法開始時期と肩関節屈曲角度はMann-Whitney検定を、不安・疼痛に関してはFisherの直接確立計算法を用いた。【結果】術後理学療法開始時期はA群が4.7±1.6日、B群が9.7±4.3日と危険率1%未満で有意差を認めた。肩関節屈曲角度は、初回、A群が124.4±25.3度、B群が116.4±30.8度。また、2週目はA群が171.9±9.9度、B群が168.3±10.7度であり、ともに有意差を得られなかった。 不安・疼痛に関してはリラクゼーションを必要とするほど上肢の緊張が高かった患者がA群に18名中3名,B群に18名中8名みられたが、両群の比率に差は得られなかった。【考察】乳房再建術は、大胸筋下に異物であるexpanderが留置されること、また関節可動域訓練とは別に体内のexpanderによって安静時でも皮膚の伸展が行われていること、以上において他の術式とは異なる。そのことが当初、大胸筋・腋窩部のスパズム、伸張時痛の増大を招き結果として訓練経過に遅延をきたすものと思われたが、今回の調査では可動域改善経過、疼痛・不安の程度に両群で差を見出すことができなかった。 これは術後の理学療法をAuchincloss術同様、関節機能不全由来の大胸筋スパズムに留意しながら訓練を進めたこと、生食水の注入が、皮膚の十分な伸張を確認しながら間隔をあけて徐々に行われていたことが要因として考えられた。唯一理学療法開始時期に遅れを認めたが、これは訓練によるexpanderの頭側へのずれ防止目的で、慎重に進められているためである。 術後、上肢の運動障害だけでなく乳房欠損による体型的・心理的問題は深刻なものと考える。expanderによる乳房再建術が、切除術と同様の順調な訓練経過を辿り、乳房を再建することが今回の調査でみとめられ、これは患者側の術式選択に際し一つの参考になるのではと考えた。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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