理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP323
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
全人工股関節置換術後の治療成績と日常生活指導の検討
*吉本 好延濱田 和範堅田 裕次平賀 康嗣山下 明広佐々木 秀幸川上 佳久安田 舜一
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抄録
【はじめに】全人工股関節置換術(THA)後の治療成績に影響を与える因子を調査し、日常生活指導の観点から報告する。【対象・方法】1981年から1997年までに当院にてTHA後5年以上追跡可能だった155関節(男性15関節、女性140関節)を対象とした。手術時の平均年齢は65±9歳、経過期間は平均10±3年であった。原疾患は変形性股関節症139関節、大腿骨骨頭壊死16関節であった。調査項目は、性別、年齢、相対体重、就労状況、原疾患、人工関節機種、経過期間、杖の使用状況、再置換と疼痛の有無を記録した。相対体重は「患者の体重/性・年代別標準体重」にて算出した。不良例は再置換術を行った関節、X線にて5mm以上のコンポーネントの移動を認めた関節、疼痛を認めた関節とした。諸項目との関連をMann-Whitney検定、生存分析にて分析した。【結果・考察】性別、年齢、就労状況、原疾患、人工関節機種、経過期間は治療成績に有意差を示さなかった。Wallbridgeは若年者や男性ほど活動性が高いと設定し、THA患者は活動性が高いほどゆるみをきたしやすいと報告している。しかし、当院では諸項目と治療成績に関連は認められなかった。活動性の評価は若年者や男性ほど活動性が高いとする間接的評価でなく、個々の生活状況を定量的に評価する手段が必要と考える。今回は、相対体重と杖の使用状況が有意に治療成績に関連していた。相対体重が1.22未満の症例のうち不良例は29/112例(26%)、1.22以上の症例のうち不良例は32/43例(74%)であった。杖に関しては、杖を屋内外ともに使用する症例のうち不良例は11/56例(18%)で、杖未使用・屋外のみ使用する症例のうち不良例は51/99例(52%)であった。このことから股関節に加わる負荷の増加が治療成績に影響する一因と示唆された。長期的な視点にたてば、体重減少と杖の使用は、THAに危惧される再置換術への移行を遅らせる可能性があるかもしれない。しかし、治療成績に影響を与える因子は単独の因子が影響するのでなく、多数の因子が関連し合っている。そこで以上の結果をふまえ、より詳しく経過を見るために相対体重と杖の使用状況とを組み合わせ、生存分析を行った。その結果、相対体重が1.22以上で杖を屋内外ともに使用する症例の不良例は5年後で2/16例(13%)であった。しかし、相対体重が1.22以上で杖未使用例・屋外のみ使用する症例の不良例は5年後で12/26例(54%)に増加し、早期に治療成績は低下した。同性・同年代の標準体重と比較して22%以上増加している症例は、杖を屋内外で使用したり、体重増加に相当する重量物の運搬を避けるなどの配慮が必要と考える。日常生活指導を行うとき、身体機能、活動性、理解力など考慮し、個々に応じて指導しなければならない。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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