理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP596
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
頸部自動運動の運動分析
ハングマン骨折を呈した一症例を通じて
*増井 健二森 憲一梅木 速水千葉 一雄権藤 要和田 英路(MD)
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抄録
【はじめに】頸部の痛みと可動域制限を主症状としたハングマン(軸椎椎弓根部)骨折の一症例を通じ,その自動運動について運動学的解釈を試みた.【症例供覧】28歳,男性,機械設計士.H14/2/12.乗用車にて対向車と衝突し受傷.救急搬送入院され保存療法を受ける.受傷後15週の固定期間(ハローベスト6週,フィラデルフィアカラー9週)を経て,17週よりROMex開始(他動的回旋は22週より).初期段階(17週)では前頭位かつ環椎後頭関節(以下C0/1)において軽度右側屈位姿勢を呈した.自動・他動運動(特に後屈)に伴い筋の防御収縮が著明,疼痛過敏な状態であった.頸部の自動可動域は前屈20°後屈0°側屈Rt20°Lt10°回旋Rt10°Lt5°であった.【理学療法経過ならびに考察】17から21週においては,広範囲な筋の過緊張による痛み増悪の悪循環を起こさぬよう伸縮性テープを用いて筋の過緊張状態の調整を試みた.前・後屈では他の運動方向に比べ改善が得られた.22週では疼痛過敏・筋の防御収縮は軽減傾向.前屈40°後屈30°側屈Rt25°Lt20°回旋Rt15°Lt10°であり,左側屈と左回旋の制限が強く,前屈は右変位を呈した.頸部の側屈や回旋において,運動方向とは対側の椎間関節の可動性がより要求され,片側の椎間関節が制限された場合,対側への側屈・回旋が制限され,前屈では制限側に変位を伴う.このことから下位頸椎右椎間関節包パターンでの制限と考えられた.22週より回旋の他動的ROMexが許可され,下位頸椎椎間関節やC0/1に対してmobilizationを施行した.回旋の著明な改善と,前屈の改善が得られた.椎間関節の前方滑りが回旋・前屈の双方に影響したと考えられる.26週では前屈位の右変位は軽減.前屈50°後屈25°側屈Rt20°Lt25°回旋Rt30°Lt35°と側屈・回旋の可動域において左右の優劣の逆転を認め,下位頸椎左椎間関節包パターンでの制限と考えられた. 30週では前屈55°後屈40°側屈Rt35°Lt30°回旋Rt55°Lt60°と左側屈・右回旋がそれぞれ対側に比べ制限されており,椎間関節包パターンの制限でないことが示唆された.自動運動観察から,左回旋は側屈を伴わない純粋な回旋が可能であるが,右回旋では純粋な回旋ができず,右側屈を伴っていた.中部頸椎椎間関節の形状から頸部の回旋は同側への側屈を伴う.ROM測定時の回旋肢位は側屈を伴わない純粋な回旋であり,C0/1での対側への側屈により遂行される.このことから右回旋時にC0/1での左側屈が不足していることが予測され,C0/1に対し左側屈を促すmobilizationを施行した.純粋な右回旋が可能となり,ほぼ正常に近い可動域を獲得できた.【おわりに】運動分析はImpairmentレベルの検査・測定においても計測しきれない詳細な問題をも見出すことが可能と思われる.頸部の運動分析も歩行分析や四肢の運動分析と同等に理学療法士の特化として臨床応用させていく必要があると考える.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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