理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP597
会議情報

骨・関節疾患(整形外科疾患)
有痛性肩関節屈曲障害に対し頚椎へアプローチした際の疼痛における効果について
*東福寺 規義村木 孝行南谷 晶石田 暉
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】肩関節周囲炎の症例の多くは、その代償の特徴として体幹と肩関節の関係が崩れていることを指摘している報告がある。しかし肩関節疾患を有する症例におけるshoulder complexの代償としての頚椎の動きに関しての報告はあまりされていない。また頚椎由来の肩関節周囲の疼痛については多く報告されている。そこで今回、我々は肩関節と頚部の関係に注目し、肩関節自動屈曲時に肩関節周辺部痛を訴える患者に対し、挙上運動に伴った下位頚椎に対するアプローチを行い、屈曲時の運動痛の変化を関節可動域(以下、ROM)、疼痛の項目から検討したので、以下に報告する。【対象と方法】対象は測定にあたって同意を得た、肩関節疾患を有し肩患肢自動屈曲時に肩甲帯、上肢に疼痛を訴える患者9名(男性2名、女性7名 平均年齢53.8±12.5歳 腱板断裂術後2名 反復性脱臼術後1名 肩関節周囲炎6名)を対象とした。治療は肩患肢屈曲と同時に患側方向に頚椎の回旋運動モビライゼーションを10回施行する。測定項目は治療前後で肩患肢自動屈曲、頚椎屈曲、伸展、側屈、回旋の各ROMと治療前後で疼痛をvisual analogue scale(以下、VAS)を用いて測定した。また,VASの治療前後での値の差(以下、VAS変化量)と治療前の各ROMとの間で相関係数を求めた。【結果】VAS変化量が低下(平均-16.8±13.8mm)した症例が6名(以下、有効群)、増加(平均13.3±6.0mm)した症例が3名(以下、無効群)であった。有効群の各ROMに関しては、肩屈曲は治療前124.2±16.9°,治療後130.0±9.49°、頚椎は治療前屈曲55.8±8.6°、伸展59.2±6.6°、患側側屈35.8±6.6°、健側側屈32.5±10.4°、患側回旋67.5±14.4°、健側回旋65.8±13.2°であった。また、無効群のROMに関しては、肩屈曲は治療前85.0±10.0°,治療後93.3±5.8°、頚椎は治療前屈曲35.0±8.7°、伸展48.3±5.8°、患側側屈35.8±7.6°、健側側屈28.3±12.6°、患側回旋43.3±16.1°、健側回旋48.3±16.1°であった。相関係数は、頚椎屈曲(r=-0.61)、患側側屈(r=-0.82)、患側回旋(r=-0.61)であり、有意な負の相関がみられ、頚椎伸展(r=-0.51)、健側回旋(r=-0.51)においても高い負の相関がみられた。【考察】VAS変化量は頚椎の上述した各ROMにおいて負の相関関係がみられた。また、有効群と無効群において頚椎の各ROMの平均値を比較すると、全ての運動において有効群の値が大きい。このことから、今回の治療で頸椎の回旋運動モビライゼーションを施行する際、治療前の頚椎のROMが大きいほうが治療時の肩挙上運動に伴い頸椎回旋が起こりやすくなり、疼痛改善の効果がみられると考察した。今回の測定では、症例数が少なく、無効群においては頚椎の治療前各ROMが全体的に小さいことから、治療期間についての検討も必要である。今後、症例数を増やし、長期成績をふまえ、治療効果の有効性を検討していきたい。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top