理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP671
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
大腿骨近位部悪性腫瘍に対する患肢温存術後中期経過
股関節外転筋力と歩行能力の推移
*高木 啓至佐藤 睦美井上 悟上田 孝文
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抄録
【はじめに】大腿骨近位部悪性腫瘍に対しては患肢温存術が一般的に行われており、大腿骨近位部切除を伴う場合は、股関節外転筋機能再建や機能温存に対して様々な方法が試みられている。しかし、術後股関節外転筋力低下は歩行障害の要因のひとつとされ、理学療法の主な対象となっている。今回、股関節外転筋力と歩行能力に着目し、その推移についてretrospectiveに調査をしたので考察を加え報告する。【方法】当部診療録より、術後2ヶ月経過時、退院時、最終評価時における股関節外転筋力、歩行能力について調査を行った。【対象】当院において過去5年間に、大腿骨近位部悪性腫瘍に対して患肢温存術を施行した10例(男性6例、女性4例、平均年齢40.6歳、退院時平均術後経過期間3.7ヶ月、平均フォローアップ期間7.2ヶ月)を対象とした。術式は腫瘍用人工骨頭置換術8例、腫瘍用全人工股関節置換術2例で、全例股関節外転筋の再建が行われた。【結果】術後2ヶ月経過時股関節外転筋力は、筋力トレーニングが許可されていなかった2例を除きMMT2-から3+、実用移動様式は独歩2例、片ロフストランド杖歩行2例、T-cane歩行3例、歩行器歩行2例、車椅子1例であった。退院時股関節外転筋力はMMT2-から4、実用歩行様式は独歩4例、片ロフストランド杖歩行3例、T-cane歩行2例、歩行器歩行1例であった。ただし、独歩可能患者においては著明なDuchenne歩行を認めた。最終評価時股関節外転筋力はMMT2-から4+、実用歩行様式は独歩4例、片ロフストランド杖歩行3例、T-cane歩行3例であった。股関節外転筋力が4+の症例はDuchenne歩行は消失していた。【考察】大腿骨近位部悪性腫瘍に対する患肢温存術では、中殿筋もしくは大転子に手術侵襲が加わるため、術後股関節外転筋力低下は必発する。今回の対象症例についても全例で術後股関節外転筋力低下を認めた。また、股関節外転筋力低下は、術後10ヶ月以上経過後も残存している症例が半数以上あることから、長期的に股関節外転筋力低下が残存する可能性が示唆された。しかし1例では最終評価時で4+まで改善を示しており、この症例が理学療法開始直後から股関節外転筋力トレーニングが可能であったことから、早期からの股関節外転筋力トレーニングが改善に関係していることが考えられた。また歩行レベルと股関節外転筋力との関係では、筋力が著変していないにもかかわらず、術後2ヶ月時と退院時では歩行レベルの改善を認めた。しかし、独歩可能な症例においてもDuchenne歩行を認めており、歩行時の重心移動習熟による股関節外転筋力低下の代償作用や、術部の安定化が歩行レベルの改善に関与していることが考えられた。以上のことより、大腿骨近位部悪性腫瘍に対する患肢温存術後症例では、股関節外転筋力の障害が長期的に残存するが歩行能力の改善は可能であること、早期からの筋力トレーニングが股関節外転筋力の改善に有効であることが示唆された。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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