抄録
【はじめに】大腿骨頸部骨折は高齢者に頻発する為、脳卒中や下肢関節疾患等の合併症・低体力・低活動性などの背景を持つことが多く、標準的な入院・訓練期間の設定は困難とされてきた。今回、頸部骨折症例に対し、その臨床背景を調査し、歩行能力の予後予測・標準訓練期間の設定等を目的に研究を行い、多少の知見を得たので報告する。【対象と方法】H13.10.1からH14.11.1の期間中に当院に入院した頸部骨折患者61症例(人工骨頭置換術及びCHS・γ-neilによる術部安定型症例 平均年齢78.6歳、標準偏差9.4 男性14名、女性47名)を対象とした。症例に対し、訓練開始前に、年齢・性別・受傷場所・訓練開始時立位・長谷川式痴呆スケール・握力の6項目を検査・調査し、これらの項目を終了時の歩行能力に対して統計学的に処理し、関連性を検討した。また、平行棒内立位・杖歩行など各訓練期での所用期間(日数)を計測した。また歩行可能の基準は屋内生活自立を念頭に、Barthel indexの基準である「杖などの歩行補助具を用いても構わないが、50mの連続歩行が可能」を採用した。【結果】50m歩行の可否を従属変数とし、前述の6項目に対し、判別分析を行った結果、判別的中率88.5%、相関比0.65という結果を得た。また50m歩行が可能となった症例の、平均在院日数は51.8日、平均訓練日数は36.4日で、平行棒内両手歩行まで4.1日、T字杖等歩行50mまでは24.5日であった。【考察とまとめ】結果より、50m歩行に至る可能性が高い症例は、1.精神機能は非痴呆から軽度痴呆 2.開始時に平行棒内立位が可能 3.訓練開始後約5日の内に平行棒内での歩行に至る という特徴がみられた。また、50m歩行可能になった後、さらに平均2週間程度の入院期間がある。訓練開始後、早期に歩行予後を予測すれば、介護保険導入や転院・転所の準備などを早期に始める事ができ、入院期間を短縮できる可能性があると考える。症例数が少なく妥当性・信頼性が不十分であるが、歩行予後予測の為に重要な幾つかの因子を確認した。症例を増やし更に検討したい。