理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP755
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
転倒による高齢者大腿骨頸部骨折の退院後の生活状況とQOL
*前野 里恵井上 早苗栗山 信江野田 裕太足立 徹也
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キーワード: 転倒, 大腿骨頸部骨折, QOL
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抄録
【目的】大腿骨頚部骨折の経験は、移動や歩行に対する自信喪失、外出の不安・恐怖心を生じ、活動範囲が狭く閉じこもりがちになってQOLの低下を生じる。大腿骨頚部骨折に関する報告は多く、QOLに影響すると述べられてはいるが、具体的にその変化を調査した報告は少ない。そこで、大腿骨頚部骨折後の症例に、退院後のQOL、生活状況、再転倒、家屋改造、歩行能力について調査・検討したので報告する。【対象・方法】1998年1月から2002年2月の間に当科にて理学療法の依頼を受けた、転倒による大腿骨頚部・転子間骨折患者は217例であった。その内、保存療法等の17例を除いた200例に郵送によるアンケート調査を実施した。内容は1.骨折前の生活状況2.手術側股関節痛や不安3.再転倒やその状況4.環境整備5.退院後の屋内・外の移動形態6.退院後理学療法の継続や頻度、内容7.WHO/QOL-26を用いた主観的幸福感であった。さらに、既存疾患,期間,受傷前と退院時の歩行能力について診療録より後方視的に調査した。統計学的処理には、t検定と回帰分析法を用い、有意水準を5%とした。【結果】転居先不明10例、死亡20例を除く170例中89例から回答が得られた(回収率52.4%)。尚、5例は重症痴呆のためにWHO/QOL26の回答が得られなかった。回答者は、術後平均1.7±1.1年で、女性76例、男性13例、平均年齢77.2±8.7歳、人工骨頭置換術59例、CHS法30例、自宅81例、施設8例、理学療法期間41.9±21.7日であった。既存疾患は79例に認められ、内部疾患と骨関節疾患が多かった。骨折前の生活状況には「全く戻っていない」21%、「戻った」は29%であった。手術側股関節痛を感じているものが50%以上、「全くない」45%であった。不安感は「多少」「かなり」を合わせて45%であった。再転倒は32%に発生し、退院後3ヶ月以降の活動時に多かった。環境整備は段差解消と手すり設置が上位を占めていた。移動能力は、受傷前は歩行群76例,介助群11例,車椅子群2例、退院時は各々55例,21例,13例、退院12ヶ月後には各々64例,8例,15例と変化していた。歩行が低下した割合は退院時31.5%、退院12ヶ月後24.7%であった。WHO/QOL26は平均3.06±0.6点で、一般高齢者3.35±0.5と比べて有意に低かった。歩行群3.2±0.6,介助群2.8±0.4,車椅子群2.8±0.6であり、歩行群は車椅子群に対して有意に高かった。また、61%で退院後でも機能訓練が継続されていた。【考察】退院後にも徐々に歩行能力が向上する傾向が確認された。一方、骨折前の生活に戻れきれず、股関節の痛みや不安感を持つ症例も多く、再転倒は約32%にあった。大腿骨頚部骨折者のQOL平均値は一般高齢者より有意に低く、特に歩行介助群や車椅子群が低得点であった。今後は、退院後の機能変化も考慮した適切な指導が望まれる。本研究は、平成13年度日本理学療法士協会助成指定研究により行った。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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