理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP774
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
変形膝関節症が女性に多い理由の分析
*高橋 洋川合 秀雄小林 和彦
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キーワード: 下腿外捻角, 歩容, 外側動揺
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抄録

【目的】 変形性膝関節症(以下OAと略す)は、原因不明の一次性と明らかな原因を背景として続発する二次性に分けられる。一次性関節症は遺伝的素因や肥満などの体質といった全身的要素の他、関節局所の解剖学的特徴や栄養障害、機械的要素が関与すると言われている。内反膝(O脚)では片足起立時に大腿脛骨関節に加わる力が最大約4倍まで増加すると言われ、下肢アライメントの破綻はOAの発生に大きな影響があるといわれる。しかしO脚は男性に多い傾向にあるに関わらず、膝OAは50才代以降の肥満女性に多いことが知られている。そこで今回健常成人の形態計測を行い、歩行時の膝関節外側動揺(lateral thrust,以下LTと略す)を観察し、これらの結果とOAに関する最近の知見からOAが女性に多い理由を考察した。【対象・方法】 健常成人16名[男性13名(平均30.0±9.97才)女性13名(平均32.9±11.1才)]に対して、以下の方法で3回測定した。(内反膝)自然立位で両足部内側を合わせ膝関節裂隙の間に入る指の本数。(骨盤傾斜角)上前腸骨棘-大転子-垂線の成す角を角度計で測定した。(下腿外捻角)長座位で足関節を中間位にし、外果-内果-膝蓋骨の成す角を足底から角度計で測定した。(LT)平地歩行で後方から観察した。【結果】 内反膝・LTは男性に多かった。(P<0.05 )内反膝の程度と骨盤傾斜角・外捻角とは相関しなかった。下腿外捻角・骨盤傾斜角は男女で差が無く、それらの程度とLTとは相関しなかった。【考察】 男性に内反膝・LTが有意に多く、下腿外捻角・骨盤傾斜角に男女差がないにかかわらず、女性にOAが多いのはToe in歩行、歩行時のstride widthの狭さ等、女性に多い歩容の影響や横広な骨盤による中殿筋効率の悪さがLTを生じやすい条件にあることに加えて体重に対する筋力等の影響が考えられた。一方最近の知見から正常膝と内側型OA膝を比較すると、OA膝は内反膝が多く、下腿外捻角が小さく、立脚側の骨盤挙上が大きく、足部の着地が後内方で、LTが多く立脚期の踵骨が外反に傾く。女性の下腿外捻角の少なさを指摘する報告もあり、女性の持つ条件が加齢と共に内反膝を発達させその結果LTが発生し踵骨が外反する。踵骨の外反は足関節の持つ機能を低下させ、下腿の回旋・前後不安定性を増加させ、LTと共に痛みの原因となりうる。以上から女性のOA発生の予防には歩容の改善、骨盤定位能力の獲得、体重管理等が重要と考えられる。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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