理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: DP775
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骨・関節疾患(整形外科疾患)
変形性膝関節症の座位における骨盤可動範囲について
*来間 弘展小林 功新田 収中俣 修高橋 賢石井 亮木賀 洋
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抄録

【はじめに】 変形性膝関節症(O.A.)においては体幹の可動性の減少している例がよく見受けられる。可動性の減少は膝関節に力学的ストレスが増大することが危惧される。今回はO.A.患者の座位での骨盤可動性について測定し、健常群と比較したのでここに報告する。【対象と方法】 対象はO.A.患者16名(男性4名女性12名、平均年齢69.3±8.7)と健常人9名(男性1名女性8名、平均年齢65.0±4.8)。O.A.患者は膝のO.A.のみで、股関節や腰に既往歴のない者である。健常人は骨関節疾患の既往のない者とした。対象者の腸骨稜と後上腸骨棘にマーカーを貼付した。また測定肢位は股・膝関節屈曲90度位、足関節底背屈0度位の端座位をとらせ、上肢は前方の板の前で組ませた。その板から胸部が離れないように指示をした。骨盤の前後傾は事前に指導し、自動運動にてその可動域を測定した。測定は安楽位と最大前傾位、最大後傾位をデジタルカメラで撮影し、後にPC(Apple社製iMac)上にてNIH Image1.62(National Institutes of Healthより出されているMacintosh用の画像解析ソフト)を用いて測定した。測定は腸骨稜と後上腸骨棘を結んだ線と床からの垂線との角度を骨盤傾斜角とした。また前後傾傾斜角の差を骨盤可動範囲とした。統計処理はSPSS for windowsにてMann-WhitneyのU検定を用いた。【結果】 健常人の骨盤傾斜角は安楽位57.56±6.93度、前傾位65.77±6.93度、後傾位49.61±8.29度、骨盤可動範囲16.16±5.25度であり、O.A.群は安楽位63.60±9.85度、前傾位67.60±9.59度、後傾位61.09±9.19度、骨盤可動範囲6.63±5.00度であった。健常人とO.A.群において後傾位と骨盤可動範囲で有意差(p<0.05)を認めた。【考察】 今回の実験により、当初推測されたO.A.患者の骨盤可動範囲の低下が示された。しかし一般に、O.A.の立位姿勢は骨盤後傾位を示すという報告がなされており、運動においても骨盤前傾が制限されていると予測された。しかし今回の実験では、前傾の制限でなく後傾の制限が起こっていることが示された。これは立位姿勢の保持に腰背筋膜が過剰緊張しているために、後傾への制限をきたしていると推測された。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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