理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EO055
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成人中枢神経疾患
片麻痺患者に対する油圧ユニット足継手付きプラスチックAFOの臨床経験
*小川 明久萩原 章由溝部 朋文島津 尚子佐鹿 博信山本 澄子
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抄録
【はじめに】第37回本学会において、油圧ユニットによる立脚相初期の足関節底屈制動が、片麻痺患者の歩容や歩行速度に影響を与えることを一症例において報告した。現在、油圧ユニット足継手付きAFO(以下油圧AFO)を臨床にて使用している。今回この装具が歩行訓練の際、治療用装具として有用か検討した。【油圧AFOの構造と機能】構造:継手付きプラスチックAFOの一側の足継手に油圧装置と戻りばねからなる油圧ユニットを取り付けた。油圧抗力は使用者に合わせ、簡便かつ無段階に調節が可能である。機能:油圧装置は、踵接地から足底接地にかけての足関節底屈に抗する制動力(底屈制動)を生じ、戻りばねは遊脚時の背屈を補助する。【対象および方法】対象:油圧ユニットの特性を活かすために、本人用AFOで歩行した際に、踵接地が良好にみられる症例を対象とした。平成14年10月から11月に当院入院中で、開発段階の油圧AFOの試用に対し同意を得られた片麻痺患者10例。平均年齢67.8±8.0歳、障害名は右片麻痺5例、左片麻痺5例。発症から評価までの期間は平均85.6±20.3日。身体機能は下肢ステージ3が3例、4が6例、5が1例。重篤な感覚障害は認められなかった。下腿三頭筋の筋緊張はModified Ashworth Scaleで1が3例、1+が4例、2が2例、3が1例。方法:本人用装具、油圧AFOを各々装着した際の自由歩行をビデオ撮影し、セラピストが歩容および歩行速度、重複歩距離、歩行率を評価、比較した。【結果】(1)本人用装具での歩行と比較して、10例中8例に歩容の改善がみられ、2例が悪化した。(2)歩容の改善例では踵接地から足底接地にかけての足関節底屈が全例にみられた。麻痺側立脚相中期から後期にかけて、股関節と体幹の伸展方向への動きが増大し、アライメントの改善がみられた。つま先離れは全例で改善がみられた。(3)歩容の悪化例では、踵接地時に足関節底屈の動きのない症例が1例みられた。立脚相のアライメントおよびつま先離れは2例とも悪化していた。(4)歩行速度は10例中8例が増加し、2例が減少した。歩行速度が増加した例では、重複歩距離の増加が8例中7例、歩行率の増加5例、重複歩距離および歩行率の増加は4例であった。【考察】足継手付きAFOに足関節底屈を許すと、反張膝の出現など歩容の悪化が生じると考えがちである。今回の症例では踵接地の際の足関節底屈はみられるが、歩容および歩行速度、重複歩距離、歩行率の改善がみられることが多かった。油圧ユニットによる適切な足関節底屈制動により、立脚中期から後期にかけての膝、股、体幹のアライメントが改善し、重心移動が円滑になることで、遊脚相に移行する際もつま先離れが改善し、全体として歩行能力が向上すると考えられる。片麻痺患者の歩行練習に際し適切なアライメントで行なうことは重要であり、油圧AFOは治療用装具として有用と考える。
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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