理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EO834
会議情報

成人中枢神経疾患
脳卒中患者における心機能
PTプログラムにおけるUCG所見の有用性
*辻 聡浩小林 真人大西 昇一熊谷 匡晃久保田 和子種村 さつき太田 喜久夫
著者情報
キーワード: EF, 基本動作, リスク管理
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【背景】脳卒中片麻痺患者では基礎疾患として全身の動脈硬化病変を有することが多く、虚血性心疾患の合併や陳旧性心筋梗塞による左心機能の低下が報告されている。特に片麻痺等の運動障害例にとっては心負荷が著しい基本動作があり、その動作学習途上においては心負荷軽減に配慮した訓練が要求される。また、社会参加を進めていく上では日常生活活動以上に体力が要求されることが多い。上記2点に留意した目標実現の為には、理学療法プログラム作成のために有用な心機能評価法が必要と考えられる。 【目的】リスク管理で実施されている心臓超音波検査(UCG)所見をもとにして、急性期及び慢性期脳卒中患者を対象とした理学療法での基本動作訓練における心負荷の影響を評価し、リスク管理の一つである心機能評価に基づいた理学療法プログラム作成の指針を得ること。 【対象】慢性期脳卒中外来リハ患者(外来リハ群):外来で理学療法を受けUCG検査を施行した慢性期脳卒中患者13名。(対象の内訳:男性11名、女性 2名、平均年齢 68.8±4.9才)、急性期脳卒中入院リハ患者(入院リハ群)入院中に理学療法を受けUCG検査を施行した急性期脳卒中患者20名。(対象の内訳:男性13名、女性7名、平均年齢71.5±8.5才) 【方法】 対象のUCG所見を検討し、調査1及び2で得られた基本動作時の心負荷指標や日常生活活動度との関連を検討した。UCG評価項目:1)左室駆出率(EF)、2)左室壁運動、3)弁膜症の程度、4)右心不全所見、5)その他心疾患の有無。調査1:基本動作時心負荷指標の検討。安静臥位及び基本動作 (起坐、起立、歩行)実施時の心拍数、酸素飽和度、血圧、double product(二重積)を測定した。調査2:生活活動性の調査。外来リハ群を障害老人の日常生活自立度判定基準を用いて8ランクに分類し、入院リハ群を理学療法訓練時の移動レベル9段階(ベット上介助_から_独歩)に分類して活動性を調査した。 【結果】1. UCG所見の検討。EF値:外来リハ群は65.8±5.1%で全例50%以上であった。入院リハ群は58.3±12.4%で5例が50%未満、2例が30%未満であった。EF50%未満の5例は全例陳旧性心筋梗塞例であり、30%未満例では訓練プログラムに心負荷軽減の配慮を要した。2.基本動作における心負荷の検討。外来リハ群ではdouble product平均値は安静時9038、起坐10808、起立10181、歩行10352で、安静時に比し起坐・歩行で有意に増加していた(paired t-検定;p<0.05)。入院リハ群では外来リハ群に比し基本動作時において高値を示した。3.その他:EF値と基本動作での心負荷、生活活動度との比較を検討し、60%未満では社会参加上公共交通機関の利用などで疲労しやすい傾向にあった。 【結語】脳卒中患者における理学療法プログラムの作成にUCG所見のうちEFが有用であった。

著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top