抄録
【はじめに】 歩行能力の評価としては,時間距離分析や運動学的分析,運動力学的分析などがある。それらの中で全身持久力の評価としては短時間よりも長時間での測定が優れていると考えられる。今回我々は,脳卒中患者の歩行テストにおける測定時間の区分と運動負荷試験時の全身持久力との関係について検討したので報告する。【対象と方法】 対象は,45歳以上60歳未満の歩行可能な男性片麻痺患者20名とした(53.6±4.1歳)。原疾患は脳梗塞10名,脳出血10名であり,麻痺側は右片麻痺13名,左片麻痺7名であった。また,発症から転入院までの期間は67.4±32.5日であった。 歩行能力のテストは,歩行様式や補装具などの規定はせずに,6分間の最大努力による歩行距離(6MD)を測定した。そして,最初の1分間に歩行した距離を1MD,5分から6分の間に歩行した距離を5-6MDとし,歩行テスト終了直後に心拍数(postHR)を測定した。一方,自転車エルゴメーター(Lode,Corival-WLP400)を用いた10w/minのランプ負荷法による症候限界性運動負荷試験を実施し,その時の呼気ガス分析(Minato,RM300system)から得られた最高酸素摂取量(peakV(dot)O2)を最大負荷量(maxWR)で除した値(V(dot)O2/WR)を運動効率の指標とした。 統計的手法はピアソンの相関係数を用い,危険率5%を有意とした。【結果と考察】 運動負荷試験の結果は,maxWR:1.14±0.49w/kg,peakV(dot)O2:15.9±3.7ml/min/kg,peakV(dot)O2/予測値:52.1±11.8%であり,歩行テストでは1MD:37.1±24.6m,6MD:227.9±144.0m,5-6MD:38.1±23.5m,postHR:101.5±17.3bpmであった。postHRは運動負荷試験における最大心拍数の73.7±13.7%であった。運動負荷試験と歩行テストとの関係では,1MD,6MD,5-6MDそれぞれにおいてmaxWR(r=0.671,p<0.005;r=0.680,p<0.001;r=0.672,p<0.005),peakV(dot)O2(r=0.499,p<0.05;r=0.511,p<0.05;r=0.512,p<0.05),V(dot)O2/WR(r=-0.508,p<0.05;r=-0.520,p<0.05;r=-0.505,p<0.05)に有意な相関が見られた。また,peakV(dot)O2/予測値については5-6MDにのみ有意な相関が認められた(r=0.458,p<0.05)。 以上のことから,片麻痺患者の歩行テストの各区分ではいずれにおいてもmaxWRやpeakV(dot)O2,V(dot)O2/WRとは同程度の相関を示したが,5-6MDはpeakV(dot)O2/予測値に対する有用な指標であることが示唆された。そして,全身持久力の指標とするには,短時間での測定よりも長時間での測定を実施することが必要と考えられた。