抄録
【はじめに】患側への荷重量は運動麻痺の重症度によっても影響を受けるが,患側荷重量がどの程度歩行能力に影響を及ぼしているのかは明らかとなっていない.また,重心動揺計などを用いた場合には,測定機器のない施設での評価が不可能であり,基準値を臨床に広く普及することが制限される.そこで今回,安価な市販の体重計を用いて患側荷重率の測定を行い,その有用性について検討した.【対象】対象は当ケアセンターの外来あるいは通所リハを利用している脳血管障害患者79例である.内訳は,男性50例,女性29例,平均年齢65.4±10.2歳,右片麻痺48例,左片麻痺31例,下肢B.R.S.は3・29例,4・35例,5・14例,6・1例である.対象者の条件としては,立位保持が上肢支持なく10秒以上可能,かつ介助歩行レベル以上の患者であり,明らかな高次脳機能障害を有していた者は除外した.【方法】患側機能の評価として体重計を用いた患側荷重率,下肢B.R.S.,患側等尺性膝伸展筋力を測定した.患側荷重率は,2台の体重計の上に足幅を10cm開いた立位をとり,患側に5秒間保持可能な最大荷重量を測定し,体重で除した値を用いた.筋力の測定は,端坐位,下腿下垂位で,アニマ社製μTas-MT1を使用した.歩行能力として,屋内・屋外歩行の自立度,10m歩行所要時間,歩数を測定した.【結果・考察】患側機能と歩行能力との関連についてみると,患側荷重率と10m歩行所要時間,歩数の間には有意な相関が認められた.また下肢B.R.S.,患側膝伸展筋力と10m歩行所要時間との間にもそれぞれ有意な相関が認められたが,患側荷重率の方が歩行能力と高い相関を有していた.次に,患側荷重率が独立してどの程度歩行能力に影響を及ぼしているかをみる為に,同一の下肢B.R.S.,患側膝伸展筋力における患側荷重率と歩行能力との関連について検討した.同一の下肢B.R.S.において,患側荷重率と10m歩行所要時間,歩数の間に負の相関を認めた.患側膝伸展筋力においても同様の結果が得られた.また,歩行の自立に必要な患側荷重率をみてみると, 0.6以上では全例において屋内歩行が自立し,0.8以上では屋外歩行が自立していた.以上のことから,患側荷重率は下肢B.R.S.や患側膝伸展筋力よりも歩行能力をよく反映した指標であり,下肢B.R.S.や患側膝伸展筋力と併用することで,患者の歩行能力を判断する上での一指標として有用であると考えられた.