抄録
[はじめに] 歩行能力に影響を及ぼす因子についての研究が多くなされているが、実用歩行の目安となる客観的な指標に関しては臨床の場面においてもまだ曖昧な点がみられる。そこで今回、我々は臨床の場面で用いられる評価表をもとに片麻痺者の実用歩行レベルの目安を策定できるか否かについて検討を試みたのでここに報告する。[対象・方法] 当院入院中、外来通院及び通所リハビリテーション利用で何らかの形で歩行可能な片麻痺者58名に対し、実生活場面で移動を歩行のみで実践している群(以下IG群)、歩行と車椅子の併用(以下MG群)、車椅子のみで移動している群(以下DG群)の3群に分け、1)年齢、2)罹病日数、3)片麻痺機能評価セット(以下SIAS)4)頚・体幹・骨盤機能検査(以下NTPステージ)、5)機能自立度評価(以下FIM)、6)10m歩行速度実計測値、7)歩行率をそれぞれの群間で比較・検討を行った。[結果] IG群-MG群では、10m平均歩行速度(21秒未満)・SIAS(54点以下)・NTPステージ(5以上)・FIM総得点(115点以下)において有意差を認めた。MG群-DG群では、10m平均歩行速度(47秒未満)・FIM総得点(105点以上)・歩行率(67steps/min以上)。IG群-DG群では、10m平均歩行速度(91秒以上)・SIAS(36点未満)・FIM総得点(90点未満)歩行率(40.6steps/min)・NTPステージ(3以下)において有意差が認められた。また、年齢及び罹病日数においては、すべての項目において有意差は認められなかった。[考察] 今回、日常の臨床場面で用いられている評価用紙を使用し実用歩行レベルの目安について検討した。結果、10m歩行速度、FIM総得点において3群間全てに有意な差が認められ、これらが実用歩行レベルの目安としての指標となりうることが示唆された。逆に年齢・罹病日数においては全ての群間において有意な差は認められなかった。これは、年齢や罹病日数に関わらず、障害の重症度(麻痺の程度、高次脳機能障害などの認知面に対する問題)が影響を及ぼしているのではないかと考えられた。また、その他の項目においては特に有意差は認められなかったものの、指標となりうる傾向があることが示唆された。今後さらに症例数を増やし検討していきたい。