理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EP334
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成人中枢神経疾患
Cyclographを用いた脳卒中片麻痺患者の歩行パターンの質的分析の試み
*堅田 志保中村 正子久野 高司山本 裕子堀 健寿石崎 芳秋小野 剛紀伊 克昌喜多村 祐里
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抄録
【はじめに】歩行のCyclographは,グラフのXY軸に2つの関節角度(例えば,股関節と膝関節)をとりデータポイントを平滑線で結んだ散布図で,複数の歩行周期を重ね描きしたグラフである.得られるグラフは周期性の歩行の場合,独特な閉じられた幾何図形を描く.我々は,グラフの形状から歩行時の関節運動パターンや協調性について捉えることができると考えている.今回はCyclographを用いて,脳卒中片麻痺患者の歩行能力の改善経過を追い,歩行の評価に一般的に用いられている歩行速度や歩行率といったパラメータの変化の背景にある,歩行パターンや協調性の変化について分析することを試みた.【対象】健常成人4名(平均年齢50.8±13.3歳,男性3名,女性1名)および,介助歩行可能な当院入院中の脳卒中片麻痺患者5例(右片麻痺3例,左片麻痺2例,平均年齢55.8±3.4歳,男性3名,女性2名)を対象とした.【方法】5m直線平地歩行(脳卒中片麻痺患者例は前方より歩行を介助)の様子を,側方4mの距離から被検者の大転子の高さに設定したソニー製デジタルビデオカメラDCR-TRV900にて撮影し(水平画角40°,有効歩行距離2.8m),ライブラリー製2次元動作解析装置Move-Tr32/2Dを用いて解析を行った.反射マーカーは上前腸骨棘(M1),大転子(M2),膝関節裂隙外側中央(M3),外果下端(M4),第5中足骨遠位端(M5)に取り付け,M1-M2を結ぶ線とM2-M3を結ぶ線がなす角を仮想の股関節角度とし,M2-M3とM3-M4がなす角を仮想の膝関節角度,M3-M4とM4-M5がなす角を仮想の足関節角度として定義した.そして8から10歩行周期の膝関節角度をX軸に,股関節角度をY軸にとったCyclographと,足関節角度X軸,膝関節角度Y軸のCyclographを作成し分析を行った.またVTR撮影と同時に5m歩行時間と歩数を計測し,歩行速度と歩行率を算出した.脳卒中片麻痺患者5例に関しては,1ヶ月ごとに計測を行い,経過を追った(4から5回計測).【結果】健常者のCyclographは,形状が左右の下肢でほぼ同じであり,被検者間でも近似していた.歩行周期ごとのばらつきも少ない.歩行速度と歩行率は一定していた.一方,片麻痺患者のCyclographは,麻痺側でグラフが小さく,歩行周期ごとのばらつきと左右下肢間の形状の相違が大きい.経過とともにグラフは拡大し,歩行周期ごとのばらつきの減少を認めた.またそれに伴って非麻痺側のグラフも拡大していく様子が観察できた.グラフ形状は左右下肢間で近似してくる症例と変化を認めない症例があった.一方で歩行速度と歩行率は全症例直線的な変化を見せた.【考察】歩行速度と歩行率の直線的な変化に対し,Cyclographの変化は多様であり,回復の過程でとられる様々な歩行戦略を反映しているかも知れないと考えられた.Cyclographの利用は,脳卒中片麻痺患者の歩行の質的側面を視覚的に分析することを可能にする有効な評価手段と考えられた.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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