理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: EP584
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成人中枢神経疾患
脳卒中片麻痺者の感覚障害の有無による座位姿勢の特徴
*木野田 典保橋田 潤
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キーワード: 片麻痺, 感覚障害, 座位
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抄録
【目的】脳卒中後遺症後の片麻痺者に出現する感覚障害が身体にどのような影響をもたらすかを調べることは非常に興味深い.そこで,座位にて体幹のアライメントと四肢の関節可動域を計測することにより,感覚障害の有無による片麻痺者の座位姿勢の相違を予測し,身体評価の一助とならないかを試みた.【対象】座位保持可能な成人片麻痺者84名.平均年齢65.8±1.4歳.右片麻痺者39名.左片麻痺者45名.発症からの期間;1から11ヶ月;平均5.1±0.3ヶ月.【方法】背もたれのない立方体の椅子前面に対し,体幹前面が平行になるように被験者自身が自然座位をとり,以下の測定を実施した.1)非麻痺側(U/S)および麻痺側(A/S):他動及び自動関節可動域テスト(ROM-t):肩関節:屈曲・伸展・外転・水平内転・水平外転.股関節:屈曲・外転・内転.2)骨盤の傾斜角:両側上後腸骨棘と仙骨の頂点でつくる面と垂線との成す角度をスラントにて測定した.3)体幹の回旋:a;上部体幹の回旋を両側の肩峰を通る線,b;下部体幹の回旋を両側の上前腸骨棘を通る線と,それぞれ椅子前面に平行な線との成す角度で計測した.4)体軸の変位:第7頚椎棘突起と第2腰椎棘突起に計測棒を当て,スラントにて垂線との成す角度を計測した.統計処理は被験者を感覚障害のない者(A群)と,ある者(鈍麻,脱失:B群).の2群に分け,それぞれのROM-t値及び体幹アライメントの角パラメータについて平均値の差の検定を行った.【結果】A群とB群との間に有意な差を示したのは,1)A/S・自動・肩関節・屈曲(A;71.3±9.7度,B;42.8±6.3度),2) A/S・自動・肩関節・伸展(A;34.9±4.8度,20.0±2.9度),3)A/S・自動・肩関節・水平外転(A;3±6.8度, B;-6.6±2.6度),5) A/S・自動・肩関節・水平内転(A;85.4±7.5度, B;49.3±6.2度),6) A/S・自動・股関節・屈曲(A;16.6±2.8度, B;10.0±1.6度),7)A/S・自動・股関節・内転(A;10.8±2.0度, B;4.6±1.2度),8)U/S ・自動・肩関節・屈曲(A;122.8±5.2度,133.5±2.6度). 9) U/S・自動・肩関節・外転(A;111.2±8.4度,B;137.7±3.8度),10) U/S・自動・肩関節・水平外転(A;18.5±2.6度,B;28.8±2.3度), 11)U/S・他動・股関節・屈曲(A;27.0±2.9度, B;21±1.5度)であった.ともに危険率p<0.05.【考察】片麻痺者の座位姿勢を感覚障害の有無という視点でみた場合,結果1)-7)よりA/S上下肢の自動ROM-t値においてA群の方がB群に比べ有意に大きいかったことは,上下肢の随意性がA群の方が良好であることを示し,運動が感覚を伴うことにより成立することを裏付けている.また,結果8)-10)ではU/S自動肩関節屈曲・外転・水平外転のROM-t値がB群で有意に大きく,U/Sの可動性が良いことを示しており,麻痺側と分離させて非麻痺側を使用している可能性が考えられる.しかし,結果11)U/S・他動・股関節・屈曲ではB群に高緊張がより存在しており,上記の2分割された上肢の使用が下肢においては高緊張として非麻痺側に影響していると考える.
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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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