抄録
【はじめに】パーキンソニズムのすくみ現象は一般に、無動の部分症状であり姿勢反射障害とは独立した概念として捕らえられている。我々は臨床上、パーキンソニズム患者の歩行時に、一側の下肢に十分に体重を移動しないまま他肢を振り出すなどの症状から、歩行時の不十分な重心移動がすくみ現象の一要因になりうると考え、FRTを用いて歩幅減少率との関連性を検討した。【対象】対象は歩行時にすくみ現象を認め、10m以上の歩行が可能であった者25例で、内訳は本態性パーキンソン病15例、血管性パーキンソニズム10例、男性18例、女性7例、平均年齢71.4歳、自立歩行15例、監視歩行4例、介助歩行6例であった。また、健常者10例、平均年齢65.1歳のFRT値も参考とした。【方法】10m歩行路の先に椅子を置き、被験者に「椅子に坐るように」と指示をして歩行状態を側面よりビデオカメラで撮影した。加速を終えた2から3m間の平均歩幅を基準として、最終1mの平均歩幅から歩幅減少率を算出した。FRTは前方および左右を合計した側方の値を測定、歩幅減少率は70%以上・未満群に分類して前方・側方FRTとの関連性、相関性について検討した。【結果】_丸1_前方FRTの平均は健常群28.3cm、歩幅減少率70%未満群で13.9cm、70%以上群21.9cmで歩幅減少率70%未満の者が有意に低値を示した(p<0.03)。_丸2_側方FRTの平均は健常群47.5cm、歩幅減少率70%未満群で17.2cm、70%以上群26.8cmで歩幅減少率70%未満の者が有意に低値を示した(p<0.03)。_丸3_前方および側方のFRTと歩幅減少率との間に相関が認められ、歩幅減少率が低下するほど前方・側方FRTが低値を示した(R=0.43 p<0.05、R=0.44 p<0.03)。【考察】パーキンソニズムのすくみ現象については多くの研究がなされており、現在では無動の部分症状として、随意運動障害、特に運動のプラン・プログラミングの障害が原因であるという見解が有力で、ドパミン性神経細胞の変性による基底核機能障害と、それによる運動野、前運動野、補足運動野への促通入力の減少や前頭葉障害が関与することが考えられている。また一方で、姿勢反射障害は無動の反映にすぎないという説もあるが、特に立ち直り反応障害との関連性を示す見解が多数で、立位時の重心移動の関連性について言及した報告は少ない。上野はすくみ足を特徴とするパーキンソン病、多発性脳梗塞例を対象に3次元床反力計を用い、すくみ足が著明な部分で、単脚支持期が消失していることを報告している。今回、我々の研究でも、歩幅減少率が著明なほど重心移動能力が低下しているという同様の結果を得た。すくみ足を呈するパーキンソン症例の理学療法では、重心移動能力障害がその一要因となりうることを考慮した上で、バランス訓練の検討が必要であると考えられる。