理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: FP590
会議情報

神経・筋疾患
神経ベーチェット病患者に対する遠心性筋力トレーニングの試み
*岩田 章史酒井 康生角田 佳子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
【はじめに】遠心性筋力トレーニングは運動単位当りの負荷が大きく筋損傷を生じ易いため、神経・筋疾患患者には適さないとする報告が多い。一方、最大下の負荷で行えば、筋損傷は軽減できるという報告もある。今回神経ベーチェット病の患者に対して、負荷を調整しながら膝関節筋に対する遠心性の筋力トレーニングを行った。その結果、まだ短期間ではあるが、わずかながら効果を認めたので、今後の検討課題も含めて報告る。【症例】49歳 女性  診断名 神経ベーチェット病1.理学療法開始時評価 (1)身長161cm 体重44kg  (2)筋力 上肢4から5 下肢3から4 (3)深部反射 両下肢で亢進 (4)知覚 下腿遠位、足部で表在覚が軽度鈍麻 深部覚は正常 (5)ADL マット上動作は自立 平坦地の片松葉杖歩行可能  2.理学療法内容 (1)下肢、体幹筋の伸張 (2)徒手抵抗による下肢筋力トレーニング (3)マット上ADL練習、歩行行・階段昇降練習
以上の内容で2週間継続したが、筋力はむしろ低下傾向を認めたため、CYBEXを用いた膝関節筋の遠心性トレーニングを開始した。開始にあたり、トレーニングによる筋痛が生じる可能性があり、生じた場合はすぐに連絡するよう説明した。また、ステロイド療法の状況にも注意した。【膝関節筋トレーニング】開始時のプログラムは (1)求心性に60度毎秒で最大トルクの1/3の負荷で10回を2セット (2)遠心性に30度毎秒で最大トルクの1/3の負荷で10回を3セットに設定した。他のADL練習等はそのまま継続した。1週後、筋痛等の訴えもないため、遠心性トレーニングの負荷を最大トルク値の1/2に増大した。【膝関節筋筋力の変化】両側膝関節の屈筋群・伸筋群の60度毎秒の求心性最大トルク値と、30度毎秒の遠心性最大トルク値を測定した。以下に開始時、20日後、40日後の左右平均値を示す(単位はNm)。求心性トルク値は屈筋群で3、5、5、伸筋群で26、27、25とほとんど変化を認めなかった。それに対して遠心性トルク値は屈筋群で10、12、16、伸筋群で30、35、42とわずかながら改善を認めた。【考察】Gregory は最大トルク値の60%の負荷であれば遠心性トレーニングによる筋痛を軽減できると報告している。本症例は既に筋力低下を生じていたため、、負荷をさらに低くして過用性筋損傷の防止を図った。またステロイドの減量中は疲労に注意して運動量を調整した。
 本症例がこうしたトレーニングを遂行できたのは、(1)筋疾患でなかった。(2)下肢の筋力が3以上あり、求心性の運動が可能であった。(3)トレーニングに対する理解力があった。(4)膝関節筋の力を調整する学習能力があった。(5)運動に支障となる程度の知覚障害がなかった。等の条件が備わっていたためと考える。今後こうした点を考慮に入れ、遠心性トレーニングの適応を検討していきたい。
著者関連情報
© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
前の記事 次の記事
feedback
Top