抄録
【目的】我々は、当学会において筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の呼吸機能の推移について発表した。その結果より、呼吸器使用状況から自発呼吸群・非侵襲的人工換気(NPPV)群・侵襲的人工換気(T-IPPV)群の3群でそれぞれ特徴のある経過を示すこと、また肺活量や呼吸筋力の進行度には解離がおこることを報告した。今回は、各評価結果それぞれの変化をより長期にまた詳細に分析し考察を加えたので報告する。【対象】1996年6月以降当科で呼吸機能評価を経時的に4回以上行ったALS患者26名(男性12名・女性14名)を対象とした。初回評価時年齢は平均58.1才(37才∼75才)、初回評価時の罹患月数は平均28.7ヶ月(9.7∼57.9ヶ月)、評価期間は平均22.8ヶ月(2.3ヶ月∼56.5ヶ月)、検査回数は平均8.7回(4∼19回)、総評価件数222件であった。【方法】呼吸機能評価として、肺活量(VC)、%VC、分時換気量(VE)、呼吸数(RR)、1回換気量(TV)、最大吸気圧(PIM)、最大呼気圧(PEM)、最大呼気流速(PCF)を測定した。また、人工呼吸器開始時期、気管切開の有無、呼吸器の種類も調査した。【結果】1、%VCの経過をグラフ化したところ、いくつかの特徴的な進行のパターンになる患者群が存在した。すなわち、a)発症後1∼2年で急激に低下する群(1ヶ月あたり%VCは7∼17%低下していた)、b) aほど急激に低下しないが(3∼4%/月)少しずつ進行し発症後3∼4年で呼吸器が必要となった群、c)発症後4∼5年間は一定のレベルを維持しその後急に低下(5%/月以上)した群。2、%VCが急激に低下する時期では、1ヶ月あたり5%以上低下していた。3、NPPVを選択したケースは9名で、その開始時期は、%VCが20%付近4名、50%付近5名であり、20%付近でNPPVとなったケースの方が進行は早い傾向にあった。4、T-IPPVを選択したケースは6名で、その開始時期は全員%VCが10∼20%のころであった。5、PIM、PEM、PCFも%VCと同様の進行パターンを示したが、ある時期に上昇する患者も数例存在した。6、VE、TVはばらつきが大きいが経過とともに低下傾向を示し、RRは増加傾向を示した。7、PCFが測定できた17名中270L/min以上を示したケースは5人(29%)・8件(6%)と少なく、160L/min以下となったケースは14人(82%)・60件(47%)と多かった。【考察】呼吸機能評価の結果を経時的・視覚的にとらえることで、それぞれのALS患者が現在どの程度の呼吸の状況にあるか、また今後の呼吸機能を予想する一つの参考になると思われた。そのためにも定期的な評価が重要と考えられる。今回の結果から、%VCが20%に近づいたり、1ヶ月に5%以上も低下するようなら、かなり厳しい状況であり注意が必要と思われる。また、PCFの低い患者が多く、これには球麻痺症状も関係しているが、痰の貯留や誤嚥に注意しながら呼吸理学療法を進めることが重要と考えられた。