理学療法学Supplement
Vol.30 Suppl. No.2 (第38回日本理学療法学術大会 抄録集)
セッションID: GP154
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小児疾患
色素性乾皮症児の加齢に伴う運動機能変化
*磯崎 弘司井上 和久西原 賢田口 孝行久保田 章仁丸岡 弘原 和彦藤縄 理中山 彰一溝呂木 忠江原 晧吉細田 多穂森田 定雄神山 潤
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抄録

{はじめに}色素性乾皮症は光線過敏症を呈する常染色体劣性遺伝性皮膚疾患であり、その症状は若年より高頻度の皮膚癌発生を認め、加齢と共に憎悪する進行性の中枢および末梢性の神経障害、関節の変形拘縮をきたす。今回、色素性乾皮症児の加齢に伴う運動機能変化を明確にし、理学療法の実施時の運動機能目標と理学療法効果判定の基礎報告として調査する。{対象}東京医科歯科大学医学部付属病院小児科外来、リハビリテーション部外来受診を継続している色素性乾皮症児A群31名(男性16名、女性15名)、年齢2から23歳(平均11.4歳)である。{方法}色素性乾皮症児の保護者に対し、誕生から現在までの発達・運動機能について以下の16項目のアンケート調査を行い項目別に検討を加えた。_丸1_運動発達=定頸・寝返り・座位保持・立位保持・這い這い・処女歩行_丸2_運動機能=走行・運動のピーク時期・装具使用・足部手術・歩行困難・起立不能・車椅子使用・嚥下困難・気管切開・経官栄養{結果}色素性乾皮症児の平均的な運動発達は、3.5ヶ月で定頚、6ヶ月で寝返り、7ヶ月で座位保持、12ヶ月でつかまり立ち、13ヶ月で処女歩行を獲得する。発達は健常児と比較してやや遅れがちである。走行やジャンプ等の運動機能は、平均で6歳時にピークを迎え、12歳時に歩行困難が出現し、15歳時に起立不能となり、16歳児に移動は車椅子が主となっている。15歳児に嚥下困難が認められ、18歳時には気管切開が行われている。足部の変形は凹足変形や内反凹足変形、外反扁平等が、小学校入学前頃から確認され、高学年なるに連れて重症化する傾向が見られる。{考察}色素性乾皮症児の運動発達は健常児に比較し、遅れがちな傾向が見られる。平均的な運動機能は小学校入学までにそのピークを迎え、機能は次第に低下し中学入学時には歩行困難、高校入学時には立位不能となる。このような神経症状の治療は、その発生機序において不明な点が多く根治的治療がなされていないのが現状である。当病院では1996年より、色素性乾皮症児に対し早期から運動療法を実施し運動機能の維持改善をはかっている。この結果を基に理学療法実施の長期経過報告を行う予定である。

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© 2003 by the Sience Technology Information Society of Japan
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