抄録
【目的】当センターでは発達障害児に対し、より実用的な移動手段の獲得や生活の活動範囲を広げることを目的に、電動車椅子を処方することがある。処方に関しては、理学療法場面から主観的に操作能力を判断し、作製に至っていることが多い。そこで今回我々は、脳性麻痺児における簡易型電動車椅子処方の現状を、処方時の状況や作製時の工夫点などについて後方視的に調査したので報告する。【対象と方法】対象:簡易ユニット(YAMAHA、JW-1)が厚生労働省で認可された、平成9年4月から平成14年9月現在までに、簡易型電動車椅子が処方された22名の内、理学療法を継続している脳性麻痺児10症例であった。男児3例、女児7例、平均年齢11歳3ヶ月であった。疾患は痙直型四肢麻痺5名、痙直型両麻痺1名、混合型四肢麻痺2名、アテトーゼ型四肢麻痺2名であった。自力移動手段は、寝返り1名、ずり這い3名、四つ這い6名であった。方法:調査項目は処方時の状況として_丸1_処方時年齢、_丸2_基本的運動能力(当センターで作成し、信頼性は第35回日本理学療法学術大会で報告)_丸3_上肢運動年齢テスト、_丸4_知能・発達検査、_丸5_駆動の自立度、_丸6_使用場所、_丸7_使用上の問題点の7項目である。また、作製上の工夫として_丸8_座位保持装置の有無、_丸9_改良点の全9項目について調査した。【結果】_丸1_処方時年齢:平均8歳9ヶ月であった。就学準備期の作製2名、就学期での作製8名であった。_丸2_基本的運動能力:車椅子駆動と体幹機能の関連から、腹臥位・座位について調査した。腹臥位は平均9.6±3.1点、座位は平均6±3.0点であった。_丸3_上肢運動年齢テスト:操作側上肢の運動年齢は、平均2歳1ヶ月であった。_丸4_知能・発達検査:共通な検査は実施されてはいないが、発達年齢の平均は4歳2ヶ月であった。また、3名は検査未実施であった。_丸5_駆動の自立度:近位監視6名、遠位監視3名、自立1名であった。_丸6_使用場所:すべての児が学校で使用していた。_丸7_使用上の問題点:複数回答で、周囲確認の幅が狭い7名、ぶつかる・乗り上げる等の危険4名、コントローラーを離しにくい2名、コントローラーの持続的把持困難1名、蛇行運転1名、車体幅の感覚がない1名、問題なし1名であった。_丸8_座位保持装置の有無:10名の電動車椅子すべてに座位保持装置がついていた。_丸9_改良点:テーブル取り付け5名、アームレストを広くする1名、コントローラー改良1名であった。改良なし4名であった。【考察】脳性麻痺児が実用的に電動車椅子を操作する為には、2から3歳レベルの上肢機能、周囲の状況理解と適切な判断をするために4歳程度の知的能力、座位保持装置などでサポートされた上でのヘッドコントロール能力が必要と考えられる。また、より安全に操作するために、評価の段階で、視空間認知能力などの検査を取り入れる必要性があると思われた。